昔々、強大なる竜から人々を守るため、一人の勇者が立ち上がった。その名はアレン。剣の腕前は抜群で、悪を討つためなら命を捧げる覚悟もあった。彼の勇敢さと力は広く知れ渡り、世界の希望と称えられた。ついには、最強の竜との壮絶な戦闘の末に世界を救い、彼は最強の勇者として名を馳せた。
しかし、その戦いが終わった後、アレンは日常の生活に困惑を覚えるようになる。長年の戦闘で鍛え上げられたその体は、竜との戦いには最適だったが、日々の生活を送るには少し頼り過ぎていた。シンプルな家事すらも難関となり、彼の日常生活は一転して混乱を極めることとなった。
アレンが大切にしていた白いシャツを洗おうとすると、力任せに絞るため、布地がほどけてしまった。食事を作ろうとすると、火力を誤って全開にし、何度も食材を焦がしてしまった。こうして、彼の生活は全てが竜討つと同じ力強さで進められ、物事は短時間で解決されるべきものとなってしまっていた。
「剣で切ることは得意だが、包丁で切るのは…」と彼は嘆息し、一人頭を抱えた。勇者としての彼の姿は依然として健在だったが、普通の生活を送る一市民としての彼は見る影もない。
しかしながら、この困難な状況の中でもアレンは諦めず、新たな敵、すなわち「日常」に立ち向かうことを決めた。「竜と戦った経験を活かせば、きっとこれも乗り越えられる!」と自分に言い聞かせ、彼は一日一日を戦うように過ごしていた。
そんなある日、アレンは近所の公園で子供たちが遊んでいるのを見つけた。彼らは木剣で戦っており、その中に1人、他の子供たちに比べて明らかに小さく、力もない子がいた。その子は何度も倒され、泣きそうな顔をしながらも何度も立ち上がっていた。
「勇者になるためには、強い敵と戦うことだけが重要なわけじゃない。日々の小さな戦いを乗り越えてこそ、真の勇者になれるんだ」と、アレンはその子に声をかけ、自分の経験を語った。
子供たちは大人の話をすぐには理解できなかったが、アレンの言葉に耳を傾け、一生懸命に頷いて見せた。その姿を見て、アレンは自分が新たな敵と戦っていること、そしてその戦いがこれからの勇者たちへの手本になることに気付いた。
「自分はまだ勇者だ。今の戦いこそが、自分の新たな使命なんだ」と、アレンは改めて自分の目の前に立ちはだかる敵、日常生活と向き合うことを決めた。
しかし、彼の日常生活の試練はこれからが本番だった。彼が普段から勇者の仕事を離れると、生活がうまくいかないだけでなく、絶えず現れる新たな敵たちとの間で揺れる笑いあり涙ありのストーリーが始まるのだった。