影の王国、古代の土地に広がる悲劇の物語。魔法と憎悪、救済と愚かさが交錯し、運命に翻弄される青年、志村深夜の物語。
彼の故郷、木漏れ日が美しく差し込む村は、心の拠り所であり、彼を支えるかけがえのない場所であった。しかし、その村は魔物の襲撃により、全てが奪われ、深夜の心には復讐の炎が燃え上がっていた。彼は知識の海に沈み、禁忌の魔法の研究に没頭する。その中で彼は「時の逆転」という恐ろしい魔法を見つける。
深夜に訪れた暗い思索。
「もしも、過去を変えられたなら……」
彼の中で何かが目覚める。実験を重ね、彼は遂に成功を収めるが、その先に待っているものは、恐ろしい因果の罠だった。彼の心の中には、確かな期待と共に、深い不安が渦巻いていた。
時は逆転し、彼は過去の村へと辿り着く。しかし目に映るのは、かつて愛した人々の笑顔ではなく、暗い影に覆われた ruins だけだった。「時の逆転」とは、自らに選んだ道の果て、彼に何をもたらすのか。
村を守らねばならない、そんな想いを抱く深夜は、再び禁忌の魔法を発動させる。しかし、彼が招いたのは、更なる惨劇であった。古代の魔物たちが再び目を覚まし、村は二度目の絶望に飲み込まれていく。深夜は目の前に広がる光景を見、心を掻きむしられる思いで立ち尽くす。
「私が救おうとしたはずなのに、なぜ……」
逃げ場のない苦悩が深夜の胸を締め付ける。彼の知識がもたらす結果は、彼自身の思惑とは他なるものであり、破滅へとまっしぐらに進んでいた。彼の周囲には、彼を慕い、支えてくれる友や家族がいたが、運命は無情に彼らを弄び、次々と消えていく。何度も手を伸ばしても、もう彼の大切な人たちを取り戻すことはできない。
最愛の者たちが失われるたび、深夜の心は重く折れ、独りぼっちの未来が重くのしかかってくる。
「この知識を手にした私が、なぜこのような運命を辿るのか……」
もともと彼は、乞われるように知識を求めていたわけではなかった。それは、愛する者を守りたいという純粋な願いから始まった。しかし、彼はその真意を忘れ、禁断の領域へと足を踏み入れてしまった。深夜の心には、自責の念と虚無感が広がる。
彼は愛を持って戻りたいのに、再び手に入れた時間は彼を呪う。
彼の愛する者たちが、深夜の目の前で次々と消えていく。
「私のせいだ……」
絶望に苛まれ、彼はついに自らの無力さを痛感する。魔法に頼り、背筋が凍るような選択をした結果、周囲の人々は自身の持つ因果の結果として苦しみ続けた。彼は愚かにも不死の魔法に手を染めたがゆえに、地獄のような現実を引き寄せてしまった。
深夜は全ての最終的な選択を目の前にして、過去を変えることが本当に良かったのか、自問自答する。
そんな彼の目の前に現れたのは、かつて彼が愛した村の ruins だ。魔物に襲われ、落ち行く人々、絶望に満ちた眼差しを向けた彼の愛する者たちの姿は、彼を苦しめ続けた。彼が戻ろうとした、あの聖なる記憶が全ての惨劇によって歪められ、ただの影だけが残っていた。
彼が得た真実は、愛する者たちを犠牲にした代償としての孤独と、無情に彼を見放す運命であった。
心が何もかもを渇望しても、手に入れることができない絶望がどこまでも続く。深夜は一人、悔いと怒りを胸に抱え、目に映る村の微かな ruins に目を閉じる。他人の手が触れた時の逆転の影で、自分自身さえ忘れてしまった。
暗い運命に抱かれ、静かに彼は消えていく。
彼の背後にある ruins は、彼そのものが失った愛の象徴だった。目の前にはかつての村の姿があったが、その地に住む者たちは過去の彼を知らない。彼はいつまでも追い求めても、届くはずのない場所へと漂う影の中で、凍りつく時間の中へと飲み込まれていく。
彼の失われたものが、彼の心の中に深く刻み込まれていく。
その時、深夜は何故この運命を迎えなければならなかったのか、運命に抗えず、ただ静かに消えていく他になかった。彼の目に映るのは、終わりのない影の王国だけだった。
