山深い場所にある月影村。それは時が止まったように、静けさが支配する村であった。村人たちは、かつての栄光を夢見て生きていたが、今はもう忘れ去られた存在である。霧が立ち込める朝、少女美咲は一人で村を見下ろす小高い丘に立ち、心の奥に潜む孤独を感じていた。
美咲は両親を亡くし、祖母と二人三脚で暮らしていた。祖母の存在は彼女にとって唯一の頼りであり、その愛情が唯一の光だった。しかし、祖母は病気にかかり、次第に弱っていく。美咲は毎日、祖母が快復することを願い、「神様、どうか助けて」と何度も祈り続けた。
しかし、村には伝わる言い伝えがあった。それは「影の者」という存在。人々はそれを恐れ、決して口に出してはいけないと教えられていた。美咲も耳にしたことはあったが、そんなものが本当に存在するとは思っていなかった。
だが、日々が過ぎるにつれ、不気味な現象が彼女の周囲で起こるようになる。夜の静寂の中、耳元で囁くような声が聞こえる。影が彼女を追い詰め、背後で何かが動く気配がする。村の人々は、彼女を避けるようになり、彼女の孤独は深まっていく。彼女の心の中に、得体の知れない恐怖が巣食い始めた。
美咲はそれでも、祖母のために治療法を必死で探す。村の長老に相談するも、彼は冷たい目で「お前には無理だ」と告げる。その言葉に、美咲は愕然とした。この村には救いはないのかと、自身の無力さを痛感する。
ある晩、月明かりが不気味に煌めく中、美咲は夢の中で呼ばれる。そこに立っているのは、月影村の神社の廃墟だった。彼女は何かに導かれるように、その場所へ足を進める。廃墟のなかには、数多の名も無き霊が漂っていると聞いたことがある。心の奥の好奇心と恐怖が交錯する。
神社の前に着くと、突然、風が吹き荒れ、背筋が凍るような冷気が彼女を包んだ。そこで出会ったのは「影の者」と名乗る存在であった。その者は無表情で、彼女に冷たい声で言った。「お前の願いを叶えてやろう。」美咲は祖母を救うため、その力を手に入れることを決意する。
禁断の儀式は始まった。彼女はその場で自身の意志を捧げ、影の者の力を受け入れる。そして、その瞬間、彼女の中に暗い力が流れ込み、心のなかの恐怖が一瞬で消えていった。彼女はまるで新しい自分に生まれ変わったかのように感じる。
美咲は祖母の元へ戻り、すぐにその力を使った。祖母の病は一瞬で癒され、彼女は見違えるような元気を取り戻した。美咲は歓喜に包まれ、再び幸福を手に入れたかのように思えた。しかし、周囲の村人たちは異変を感じ取り、彼女を恐れるようになった。少しずつ、村全体が閉ざされていく。
次第に、美咲の周りには様々な不幸が起き始めた。村の作物は枯れ、人々は病に倒れ、争いごとが増える。明らかに影の者の力が村に広がり、恐怖が順次旺盛になっていく。彼女は心のどこかでその責任を感じつつも、祖母が健康でいることのみに心を奪われていた。
だが、村の人々は美咲を恐れ、彼女を村から追放しようと決めた。そして、ある夜、村の会議が開かれた。村人たちは集まり、美咲の存在を小学し、影の者の魔で彼女が不幸をもたらしていると詰め寄った。美咲はその場で否定しようとしたが、彼女の心のあの暗い声が響いた。「お前は一人で孤独だ。それが運命だ。」
美咲は絶望し、怒りに震えた。自身の力が渦巻く中、彼女はついに影の者の呼びかけに応えた。「私を許さないなら、全てを奪い去れ!」その瞬間、影の者が彼女の意志を受け入れ、村にさらなる災厄をもたらす。
最終的に、夜が明けると美咲は祖母を失い、影の者の力に身を委ねることにした。彼女は影の中で永遠に彷徨うことになり、その目は希望も夢も失っていた。
影が暗く覆う村に、美咲の名前は「影の者」として語り継がれることになった。彼女の人生はトラジディで満ち、残された者たちは彼女の存在を恐れ、忌み嫌うことになるのだった。