武術 – 最終話「破門」

第1話 第2話 最終話

東京都内の寺。清々しい朝の光が、修行をする僧侶たちの姿を照らしていた。中でも、萌仁香の動きは特に目立っていた。彼女の太極拳は日に日に洗練され、その技は確実に成長していた。

ある日の修行中、萌仁香は突然、感情的になった。彼女の手が他の僧侶の肩に当たり、その僧侶がつまづいてしまった。その瞬間、寺内は静寂に包まれた。

夏樹は深いため息をつきながら萌仁香の方へ歩み寄った。「何をしているんだ?」と彼は静かに尋ねた。

萌仁香は顔を伏せ、「ごめんなさい」と謝罪した。しかし、夏樹の目は厳しく、彼は萌仁香の手を取り、「この寺を去るように」と言い渡した。

萌仁香は驚きの表情を浮かべた。「でも、先生…」と彼女は言葉を失った。



夏樹は彼女の目を真っ直ぐに見つめ、「自分の力を制御できない者が、この寺で修行を続けることは許されない」と言った。

萌仁香は涙を流しながら、寺を後にした。彼女は自分の過ちを深く悔い、夏樹を探しに大阪へと向かった。

大阪の繁華街を歩きながら、萌仁香は自分自身を振り返った。自分が何のために修行を始めたのか、夏樹への感謝の気持ち、そして自分が受けた差別や偏見についての思い。彼女の考えは深まっていった。

彼女が道頓堀を歩いていると、遠くで夏樹の姿を見つけた。しかし、彼は一人ではなく、他の僧侶たちと話していた。萌仁香は夏樹に近づくことをためらったが、彼女の足は自然と夏樹の方へと向かっていった。

「先生!」と萌仁香は声を上げた。夏樹は彼女の方を振り返り、驚きの表情を浮かべた。

「萌仁香…?」と夏樹は言った。

「私、本当にごめんなさい。自分の力を制御できず、他の僧侶を傷つけてしまいました」と萌仁香は深く頭を下げた。

夏樹はしばらく沈黙した後、「君の気持ちは分かる。しかし、修行者としての自覚が必要だ」と言った。

萌仁香は涙を流しながら、夏樹への想いや自分が受けた差別について語った。夏樹は彼女の言葉に耳を傾け、深く考え込んだ。

夜が更ける中、夏樹と萌仁香はそれぞれの思いを胸に、大阪の街を後にした。物語は、萌仁香が夏樹を探し続ける姿で幕を閉じた。

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