桜井いろはは、毎日夢中になって活動する大学生だった。彼女は、勉強やアルバイト、サークル活動に忙殺されながらも、人に優しくあることを心がけていた。友達の悩みを聞き、一生懸命サポートすることが彼女の生きがいのようになっていたが、そんな日々が彼女の心を次第に蝕んでいったことに、彼女は気づいていなかった。
ある日の講義後、いろはは友人たちとカフェでおしゃべりしていると、その内容がまたも彼女自身の夢の話から遠ざかるものだった。
「ねぇ、いろは。あなたは何がしたいの?」と、友人の一人が尋ねた。
「私は…みんなを助けたいって思ってるけど、そのためには…」任務に追われる毎日を振り返りながら、彼女は言葉を続けることができなかった。夢という言葉に彼女は抵抗感さえ覚え、いつからか夢そのものを考えることすら躊躇っていた。
その晩、疲れ果てたいろはは、帰宅するとソファに倒れ込み、いつの間にか居眠りを始めてしまった。目を閉じたまま、彼女は優しい光に包まれる感覚を覚えた。それは、人の心の奥深くにある希望を呼び覚ますかのような、特別な光だった。目を開けたとき、彼女がいたのは異世界「リュミナリア」だった。
リュミナリアは、美しい自然に包まれた世界で、かつては人々の心を癒す「聖なる樹」がそびえていた。しかし、今はその樹が枯れかけ、周囲には暗い影が漂っている。人々の心は失われ、争いが絶えない不幸な世界だった。
いろはは、自身の優しさを胸に、民を救うための旅に出る決意を固めた。彼女は、リュミナリアの人々が抱える心の痛みを理解し、関わり合いながら旅を続ける。道中、彼女は困っている民を助け、彼らの心に希望の光を灯そうと奮闘するが、なかなか思うようにはいかなかった。
途中で出会った仲間たち、勇敢な戦士のアレン、知恵深い魔法使いのリリカ、心優しい獣人のルークと共に、いろはは「聖なる樹」を救う方法を探り続けた。しかし、樹に近づくほど、彼女の優しさがかえって仲間や民たちに影響を及ぼし、時には彼らを絶望へと導くこともあった。いろはは、自分の心にある「救い」の本質は何かを問うようになった。
「私は本当に人々を救うことができるのか…?」
そんな疑問が頭を悩ます中、旅の途中、いろはたちは一つの村に辿り着いた。村はあらゆる悪化した状態にあり、村人たちは互いに疑い合い、争っていた。彼女は村人たちの話をじっくりと聞いた。
「私たちの心を取り戻すためには、聖なる樹を救わなければならない。」
いろはは、村人たちに優しさをもって語りかけたが、彼らの心は固く閉ざされ、誰も彼女を信じようとしなかった。失意の中、いろはは自分の優しさが必ずしも「救い」ではないのかもしれないことに思い至った。
その後、彼女は聖なる樹の元へ向かう途中、無数の敵と戦わなければならなかった。その間にも、彼女の心に抱える「闇」が少しずつ芽を出していた。気がつけば、自身の優しさが、時として人々をさらに傷つける要因になっているという事実が彼女の心を掻き乱した。
いろははわずかな希望を信じ、聖なる樹に向かい続けた。だが樹に近づくほど、彼女自身が闇を引き寄せていることに気付いた時、真の「救い」の本質に迫る選択を迫られることとなった。
「私はこの世界の救い主ではない。むしろ、さらなる混乱を招く存在なのかもしれない。」
その苦悩を抱えながらも、いろはは決断を求められた。
「自分を犠牲にしなければ!人々を救うためには、私が…」
彼女は自分を捨てることを決意し、聖なる樹の力を受け取ろうとする。しかし、そのとき、彼女の中から意外な形で再生された「希望」が芽生えた。それは彼女が出会ったすべての人々の思いやりの決して消えることのない灯火だった。
やがて、いろはは自らの犠牲を超えて、彼女が育んだ希望の光に導かれ、かつての聖なる樹をよみがえらせる力を手に入れることになった。
結果として、彼女は「真の光」となり、リュミナリアは彼女の優しさを通じて新たな希望を手に入れることができた。彼女の優しさが不思議な形で人々を導く鍵となり、それぞれが抱える孤独や痛みは、やがて共鳴しあって癒されていった。
こうしていろはは、自らの願いを超えた形でリュミナリアを救う存在となった。
生き残った彼女の仲間たちは、彼女の導きによって新たな道を歩き始め、やがてリュミナリアは再び平和の世界となったのであった。