エルナリアの女神に選ばれた私は

高橋美咲は、何の特徴もない普通の女子高生だった。クラスメートの中にも、彼女より秀でた者は多かった。美咲自身も、それを理解していた。
高校生活は一見普通だったが、彼女の心の奥には深い自己否定が存在していた。
「私には何もできない。」
友人たちのようにスポーツが得意でもなく、勉強も普通。美咲はいつも自分を他人と比べ、自信を持てなかった。
そんな彼女に転機が訪れたのは、学校からの帰り道だった。信号が青になり、彼女は横断歩道を渡った。ふとした瞬間、後ろから急に車が突っ込んできた。回避もできず、彼女の意識は暗闇へと吸い込まれていく。
目を覚ますと、見慣れない空間に身を置いていた。そこは異世界「エルナリア」で、魔法が風に舞い、異なる種族たちが共存していた。しかし、最初に降りかかってきたのは、厳しい運命だった。目覚めたばかりの美咲は、彼女を狙う悪党たちに取り囲まれていた。
「助けて!」
咄嗟に叫んだその瞬間、背後から現れた謎の人物が悪党たちを一掃してくれた。これが、彼女の冒険の始まりだった。
彼女はこの異世界で、様々な種族の仲間たちと出会い、彼らと共に旅を続ける。だが、彼女の心の奥の穴は埋まらなかった。いつも彼らに助けられ、自分の力を発揮できないことに苛立ちを感じていた。

仲間たちは優しく、美咲の心を支えようとしてくれた。
しかし、美咲は自分を信じられなかった。
美咲は成長するためにもっと強くなる必要があると感じながらも、彼女の内なる声は「自分には無理だ」と繰り返す。

仲間の中には強い魔法使いや勇敢な戦士がいた。彼らは自らの力で立ち向かう姿に憧れ、そして羨望を抱く日々が続いた。だが、彼女が直面する問題は、彼女の無力感だけではなかった。
次々と仲間たちが襲われ、彼女の目の前から消えていく。
「私が守れなかったから…」
その想いが彼女の心をむしばんでいく。ある晩、信頼する仲間が命を落とした。その瞬間、美咲は決意する。自分が弱いのはもう嫌だ。仲間を守るために、彼女は戦うと誓った。
日々の修行を重ねる中で、彼女は少しずつ自分の内なる力を見出す。その先には、自らの恐れを乗り越える道が広がっていた。

様々な試練を乗り越え、ついには最終決戦の日が訪れた。魔王が君臨する城へ仲間たちと共に向かう。彼女の心には、過去の仲間たちの笑顔が浮かんでいた。その背中を思い出し、彼女は一歩を踏み出す。
戦闘は激しく、敵の魔法の前に仲間が次々と倒れていく。美咲は必死に剣を振るい、呪文を唱えた。自分の限界を超えて、恐怖を忘れ、全力で戦った。
そして遂に、魔王との対峙が訪れた。全身を震えさせながら、彼女は叫んだ。
「私は、仲間たちのために戦う!」
彼女の意志に触れた仲間たちの力も合わさり、魔王はついに力尽きた。
勝利の瞬間、彼女の中には充実感が広がる。しかし、その瞬間、彼女は選択を迫られた。
エルナリアで腑に落ちたのは、戦いに勝った先に何があるのか、ということだった。彼女は元の世界に戻ることもできた。しかし、美咲は思った。
「今までの私が、ずっと憧れていた『何か』を見つけるには、ここにいるべきなんじゃないか?」
そう決断した美咲は、異世界に留まることを選んだ。仲間たちとの絆が深まった彼女は、これからの生き方を自分で決めていくことができる。
全てが元に戻ることはない。彼女は自身の選択の中に縮こまった過去を置いたまま、歓びで満ちた新たな世界へと一歩を踏み出した。

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