ある普通の日常を送っていた佐藤健太。彼は、周りからは「穏やかで優しい青年」と評価されていたが、心の中では常に退屈さが影を落としていた。何か刺激のある日々を求めていた彼は、友人からの「一度カレーショップに行ってみない？」という誘いを受ける。カレー好きの健太は、話に乗ってカレーショップに向かう。
あの日、カレーショップでの出来事は、彼の人生を一変させる運命的な瞬間だった。店内に足を踏み入れると、さまざまなカレーの香りが漂い、目の前に並ぶメニューを見ていると、突然店が揺れ始めた。「な、何だ！？」「健太様、運命の扉が開かれます！」
友人の言葉も耳に入らぬまま、彼はそのまま異世界へと引き込まれてしまった。彼が目を開けた先には、信じられない光景が広がっていた。目の前に広がるのは、「カレー王国」という幻想的な土地。そこには、カレーを愛する人々が住んでおり、カレーの神様「スパイシー神」とそのお供の猫型精霊「ルー」が彼を出迎えた。
「おお、異世界からの訪問者よ！我はスパイシー神だ！」
健太は圧倒されながらも、「スパイシー神」と名乗る神様に目を凝らした。続けて彼は、国を治める王が失踪してしまい、このままではカレー王国が滅びかけていると告げる。健太は優しい性格ゆえ、彼の話に心を動かされる。「助けます。王を探し出して、国を救います！」 そう決意した瞬間、カレー王国の住人たちが集まってきた。
だが、健太の思いとは裏腹に、王国の住人たちは全員が異常なお人好しで、冗談を言ったり、彼を困惑させる言動を繰り返した。「あらあら、健太くんしっかり！今、カレーが熟成中だから！」と彼の後ろから声がかかる。振り返ると、透明なフィルムに包まれたカレーが山積みのテーブルに座っているおばあさんが笑っていた。
「食いしん坊のおばあちゃん、カレーを食べるのが待ちきれないらしいよ！」とルーがさらりと発言する。
その後も、カレーの生産者やシェフたちと出会うたびに、彼は嬉しさと戸惑いで交錯する時間が続いた。だが、何とかみんなの助けを借りながら王を探す旅が始まった。時には彼らとのカラクリに笑い、時にはカレーを食べすぎて腹痛になるという体験をしながら、健太は王の行方を追い続けた。
冒険の最中、健太とルーは次第に絆を深めていく。ルーはその聡明さと小さな体から出るくすっと笑える言動で、元気づけてくれた。あるとき、ルーは健太にこう言った。「健太くん、王様を探すのも楽しいけれど、君は人々の笑顔をつくることが大切なんだよ。」その言葉が彼の心に深く刻まれ、健太はカレー王国の人々とともに笑いの旅を続けることに決めた。
軽快な冒険の果てもわからぬままに、ついに「おつまみカレー」の商人に出会う。彼こそが失踪していた王だった。健太は驚きを隠せなかった。「あなたが王だったのですか！？」王は大笑いしながら、それを認めた。「そうだよ、ずっと皆にカレーを届けたくて、こっちに隠れてたんだ。なかなかバレなかったでしょ？」
健太たちは、王を正式に迎えるためのお祭りを開くことにした。カレーの香りに包まれた王国で、多くの住人が集まり、皆の笑顔で溢れる祭りが始まった。ルーとともに、カレーの神様から祝福を受けた健太は感動し、国を代表する王の隣で祭りを楽しんだ。
王国が再び平和を取り戻した瞬間、健太の胸の中にも新たな感動が生まれた。彼は次第にこの王国とその住人たちが大好きになり、自分の役目を果たしたという満足感を得ていた。
そしてカレー王国を後にする際、スパイシー神からは「夢のカレーのレシピ」を授けられ、思わず涙ぐんでしまう。彼はそのレシピを持って帰り、元の世界で新たなカフェを開業することを決意する。異世界で得た友人たちとの絆が、彼の新たなスタートを支えることになった。
健太のカフェ「やっぱり！カレーの国」には、彼のもとに次々と人々が集まる。カレーの香りと温かい笑顔が溢れるその場所で、彼はついに自分が求めていたものを見つけたのだ。そして、健太はいつしか、自らが異世界の住人として過ごした日々を忘れないように、「カレー王国からの友情の証」として、毎日、特別なカレーを作って提供し続けていた。
かくして、彼のカフェは繁盛し、どこまでも続く笑いと絆の物語を描き続けることとなった。健太は穏やかで優しい性格のまま、これからも毎日を楽しみながら、人とのつながりを大切にする日々を送るのだった。彼の冒険は、人々にとっての笑顔の源となり、カレー王国の仲間たちとの夢のような絆を持続させ続けた。
物語は、時を超えて続くのだ。
