桜井あゆみは東京の小さな町に住む明るい性格の女性。今日も彼女は、友人たちと公園で遊んでいる。彼女の笑い声は、周囲の人々を和ませる。
「ねぇ、みんな!雪だるまを作ろう!」
あゆみは嬉しそうに提案し、友人たちを誘う。雪の降る日、雪で遊ぶのが大好きな彼女にとって、それは特別な楽しみだった。友人たちも乗り気になり、雪だるまを作り始める。
あゆみは、積もった雪を両手で丸め、雪だるまの胴体を作る。友人たちも次々と手伝い、すぐに大きな雪だるまが完成した。
「わぁ、すごく可愛い!」
あゆみはできた雪だるまを見つめ、満足そうに微笑む。友人たちも同じように嬉しそうにしていた。そんな彼女の日々は、本当に無邪気で明るいもので溢れていた。
しかし、ある日の通勤途中、あゆみは一人の男性と出会った。その名は拓海。彼は少しクールな雰囲気を纏った、どこか大人びた存在だった。
「おはようございます。」
拓海は、さらりとした声であいさつする。あゆみはドキッとしてしまった。彼女はその日から、拓海のことが頭から離れなくなってしまう。
あゆみは、彼に会うたびに自分の可愛さと明るさをアピールしようとした。
「こんにちは、拓海さん!見て!新しい髪飾りをつけたの!」
彼女は自分がその日身につけている可愛い髪飾りを見せびらかす。
拓海は若干戸惑いながら、微笑む。
「可愛いね。」
その言葉を聞いて、あゆみは嬉しくなり、さらにアプローチを続けた。
ある日、手作りのクッキーを持って拓海に会いに行くことにした。
「はい、これ。私が作ったんだ!」
あゆみは、ちょっとした緊張感と一緒にクッキーを渡す。
しかし、拓海はクッキーを手にすると少し困った表情をした。
「ありがとう。でも、甘いものが苦手で…」
彼は申し訳なさそうに言った。あゆみの心は少し切なくなる。
「そうなんだ…。じゃあ、次はサンドイッチでも作ってみるね!」
あゆみは、すぐに気持ちを切り替える。彼女はその明るさで拓海の心を開こうと奮闘していた。
しかし、次第にあゆみの無邪気な行動は周囲にトラブルを引き起こすことが多くなっていた。
友人たちとの遊びに夢中になりすぎ、拓海との約束を忘れてしまうことが度々起こった。
「またすっぽかされた…」
拓海は、あゆみに対するイライラを募らせる。
彼に会うたびに無邪気に振る舞う彼女の姿が、彼の心にストレスを与えていたのだ。
「ごめんなさい、拓海さん!」
あゆみはいつもそれを謝り、笑顔で誤魔化す。
しかし、拓海の反応は次第に冷たくなっていく。彼女のポジティブな思考が裏目に出てしまったのだ。
ついに、ある日、拓海が彼女に言った言葉があった。
「本気で付き合いたいと思うのなら、もう少し大人になってもらいたい。」
あゆみはその言葉を聞いた瞬間、心が砕けるようだった。
「私、そんなに幼いの?」
彼女は目に涙を浮かべたが、拓海の冷たい背中を見るしかなかった。
それから数日間、あゆみは拓海のことを考えた。自分の明るさと無邪気さがむしろ彼を遠ざけているのではないかと。
彼女は悩んだ。
もし、もっと大人に見えるように振る舞ったら、拓海は振り向いてくれるのだろうか。そして、彼女は自分を抑え、心を閉ざしてみることにする。
常に明るく子供のように振る舞うあゆみは、次第にその姿を失ってしまった。
彼女は友人とも遊ばず、ただ拓海に会うために自分を演じる日々が始まる。
でも、それは彼女を苦しめるだけだった。
愛していた人のために、一生懸命自分を変えようとするほど、あゆみの心は空虚になっていくのを感じた。
数ヶ月後、そんなある日、拓海が他の女性と楽しそうに話しているのを見かけた。
その瞬間、心の中が崩れ落ちる。
見送るあゆみの目には、一筋の涙が流れた。
自分を偽らなければいけない辛さに耐え、また、自分自身を失ってしまった孤独感が彼女を包み込む。
「もう一度、私を見て欲しい…」
心の中で叫び続けたが、もうそれは叶わぬ願いだった。
無邪気さを失ったあゆみは、ただ静かに彼を見送るだけであった。
彼女の心には、もはや何も残っていなかった。
運命の出会いから始まった物語は、彼女の無邪気な笑顔の裏側に隠れた孤独を浮き彫りにし、静かに幕を下ろした。
愛しの子供たち、愛されたいという願いが、自身の幼さを引き裂いてしまった……