潮騒のメロディー – 第2話

再生の始まり

詩織は自室の隅、母のギターを前にしばらく立ち尽くしていた。ギターの弦や木の質感に触れること自体、久しぶりだった。彼女は深呼吸をして、ギターを手に取った。指が弦に触れると、昔の記憶や感情が蘇ってきた。

その日、悠は詩織の家を訪れた。彼の提案で、二人はリビングで練習を始めることになった。最初は詩織の指の動きは不慣れで、ギターの音も少し歪んでいた。しかし、悠の優しさや忍耐強さに支えられ、詩織は次第に自信を取り戻していった。

学校では、詩織の変化を目の当たりにした生徒や教師たちが驚きを隠せなかった。かつて無表情で音楽に対して興味を示さなかった彼女が、今では熱心にギターの練習に励む姿は、まるで別人のようだった。特に、彼女のクラスメイトたちは、詩織が音楽の楽しさを取り戻してきたことに、心からの喜びを感じていた。



ある日、学校の廊下でポスターが張られているのを悠が目にした。それは、近くの日に開催される学校の音楽祭の案内だった。彼は詩織に、この音楽祭で一緒に演奏しないかと提案する。詩織は少し驚いた表情を浮かべたが、悠の熱意に心を打たれ、「やってみたい」と答えた。

二人の練習は、学校の音楽室で始まった。悠のピアノと詩織のギターと声。それぞれの音が重なり合い、新しいハーモニーを生んでいった。詩織は母の遺した歌詞を元に、自らの想いを込めた新しい曲を作成し始めた。その曲は、詩織の過去と未来、そして悠との出会いを象徴するものとなった。

学校の音楽祭までの日々は、あっという間に過ぎていった。しかし、その間に二人は、共に音楽の深い部分を探求し、互いの心と音楽に共鳴する関係を築いていったのだった。

第1話 第2話

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