モンスターストーン – 第1章: 第5話

< モンスターストーン – 第1章: 第4話

慶太郎が目を覚ますと、そこは見知らぬ天井だった。ぼんやりとした視界の中で、白い蛍光灯の光がまぶしく感じられる。体のあちこちに鈍い痛みが走り、全身が重く感じられた。彼はゆっくりと頭を回し、周囲を見渡した。病院の一室のようだ。点滴が腕に繋がれ、心拍計の機械音が一定のリズムで響いている。

「ここは…病院か?」慶太郎は小さく呟いた。記憶の中で、怪獣との戦いの断片がフラッシュバックのように蘇る。アウルムの声、スラの姿、そして激しい戦闘の後、気を失った瞬間が頭をかすめた。

「気がついたか、石空君?」隣のベッドで何かを確認していた看護師が彼の目覚めに気づき、優しく声をかけてきた。「大丈夫?少しの間、意識が戻らなかったから心配していたのよ。」

「ええ…ありがとうございます。でも、どうしてここに?」慶太郎は頭を抱えながら尋ねた。

「君は怪獣と戦った後で、意識不明の状態で運び込まれたのよ。どうやらその時に怪我をしていて、治療を受けていたの。幸い、命に別状はないわ。」看護師は微笑みながら説明した。

「怪我…か。そうか、あの時の反動で…」慶太郎は頭の中で状況を整理しようとしたが、まだ完全には理解できない部分が多かった。しかし、自分が無事であることは確認できたので、少し安堵の表情を浮かべた。

しばらくして、医師がやってきて簡単な検査を終えた後、「これで君は退院してもいいよ」と告げた。慶太郎は少し驚きながらも、「ありがとうございます」と感謝を述べた。医師は軽く微笑んで、「しばらくは無理をしないでね。君は若いからすぐに回復するだろうけど、あまり無茶はしないように」と忠告した。

退院の手続きを終えて病院を出た慶太郎は、家族に迎えられた。母親は彼を見て、涙を浮かべながら抱きしめた。「本当に無事でよかった…何があったの、慶太郎?」母親の問いに対し、慶太郎は何と答えればいいのか分からず、ただ「大丈夫だよ、ちょっとした事故だったんだ」とだけ言った。

家に帰ると、友人たちが集まってきて、彼の無事を喜びつつも、何が起こったのかを聞きたがった。しかし、慶太郎は口を閉ざしたままだった。「何かあったのか?」と友人たちはしつこく尋ねてきたが、慶太郎は「大したことじゃないよ」とだけ答え、それ以上は何も話さなかった。彼の胸の内には、アウルムとスラのこと、そして自分の身に起こった出来事が渦巻いていたが、それをどう説明すればよいのかが分からなかった。

翌朝、慶太郎が家で一息ついていると、玄関のチャイムが鳴った。母親が応対に出ると、見知らぬ二人の男性が立っていた。彼らはきちんとしたスーツを着ており、一目でただならぬ雰囲気を漂わせていた。

「石空慶太郎君はいますか?」一人の男性が尋ねた。母親は少し不安そうな表情を浮かべながらも、「はい、いますけど…どちら様ですか?」と尋ね返した。

「我々は対怪獣協会の者です。彼にお話ししたいことがありまして…」男性が名刺を差し出しながら答える。母親は一瞬戸惑った様子を見せたが、すぐに慶太郎を呼んだ。「慶太郎、あなたに会いたいという方たちが来ているわ。」

慶太郎は居間から顔を出し、その二人の男たちを見て少し緊張した。彼らがただならぬ理由で訪ねてきたことは明らかだった。「はい、僕が石空慶太郎ですが…」と彼は答え、二人の男性に近づいた。

「石空君、君には怪獣との戦いで見せた力を、ぜひ我々の対怪獣部隊で活かしてほしいと思っているのです。」男性の一人が真剣な表情で話を続けた。「君の中に宿る特別な力…アウルムの力だ。我々にはその力が必要です。」

慶太郎は一瞬驚きの表情を浮かべた。彼らがアウルムのことを知っているのか?どうしてそのことを知っているのか?疑問が頭を駆け巡る。

「…どうして、そんなことを知ってるんですか?」慶太郎は思わず問い返した。

「我々は長い間、隕石とそれに伴う怪獣についての研究を続けてきました。君の力もまた、その一環として注目しているのです。」男性は冷静に答えた。「君が使える力、それはただの個人的なものではなく、この世界を守るための重要な武器となり得るのです。」

「でも…僕は…」慶太郎は戸惑いながら答えた。突然の提案にどう答えればよいのか分からなかった。彼の中では恐れと好奇心が入り混じっていた。

そのとき、心の中にアウルムの声が響いた。「慶太郎、妾の力を試してみよ。この機会を逃してはならぬぞ。」

アウルムの言葉に、慶太郎の中で何かが決まった。「…わかりました。僕にできることがあるなら、やってみます。」彼はそう答えた。

「素晴らしい、君の決意に感謝します。」男性たちはほっとしたように笑みを浮かべ、慶太郎に詳しい説明を始めた。これから始まる戦いのために、慶太郎は新たな挑戦に立ち向かう決意を固めた。

第1章:第1話第2話第3話第4話|第5話

タイトルとURLをコピーしました