恋するコーヒーメリッサ

東京の小さなカフェ「メリッサ」。

ここでは、美咲が毎日元気いっぱいにお客様を迎え入れている。30歳の彼女は、おおらかで明るく、誰にでも愛される性格だ。

利便性の高い場所にあるこのカフェは、美味しいコーヒーだけでなく、ユーモアあふれるメニューが評判で、常連客たちとの軽妙なやり取りが日常の風景として定着している。彼女の手作りスイーツや特製のラテアートには、いつもお客たちからの「おいしい!」という声が響いている。

ある日、そのカフェに一人の男性が訪れた。無愛想でハンサムな青年、拓海。その顎のラインがしっかりとした彼の顔には、どこか緊張感が漂っている。そんな拓海が美咲のカフェに頻繁に通うようになったのは、何かの縁かもしれない。

「いらっしゃいませ!」

美咲は普段どおりに明るい声をかける。しかし、拓海は淡々とした様子でカウンターに座る。彼の目にはどこか冷たい印象があり、美咲は少しだけ戸惑いを覚えた。

「何にしますか?」

「カフェ・アメリカーノ、ホットで。」

彼は短く答え、ただ淡々と美咲を見つめていた。彼女は拓海の言動に少し気を引かれ、心の中で「この人、絶対に笑わないタイプだ」と勝手に思ってしまった。

しかし、その無愛想な拓海を見ていると、何かしらの愛おしさが芽生えてくる。美咲は「笑ってほしい!」と密かに確認し、何とかして彼を笑わせようと決意することにした。

その晩、美咲は自宅で考えた。

「おかしな挑戦、何かやってみよう!」と。この挑戦は冗談めいたことでも何でもいい。彼の笑顔を引き出す、それが彼女の目的だ。

次の日、美咲はカフェで特製のコーヒーのカップに、カラフルなマシュマロを浮かせた飲み物を作った。カップの横には彼女独自の「マシュマロウィルス」と名付けたキャラクターのイラスト付きのメッセージカードを添えて。

「これ、どうですか?」

笑顔を見せながら拓海に差し出す。拓海は無表情でカップを見つめる。「何これ?」と心の中で思っているらしい。彼はそれでも嫌悪感を示さず、少しだけギョッとした顔をする。

その姿が、美咲には面白く映った。「あ、ほら、それが本当のコーヒー。マシュマロが武器になるとは思っていなかった?」と彼女は突っ込む。拓海は無言でカップを飲み、どこか不思議そうな顔をしていた。彼の口から少しだけ「うまい」という言葉が出てきたが、努力の割には効果が薄い。

数日が経ち、次第に美咲は拓海に対して波風が立たない態度で接することとなった。毎回の訪問で異なるユーモアで彼を驚かせようと試みたが、拓海の無表情は変わらない。それでも、美咲はあきらめずにチャレンジを続けた。

その中で彼女は、少しずつ拓海の変化に気づいていく。かつての無反応とは異なり、時折彼の口元が緩む瞬間が見られる。

「今日の一杯は、特別なスパイスが入っているんです!」

「はは、何だそれ?」

拓海が蒼い目を少し輝かせているのを見て、思わず嬉しくなった美咲。「そう、秘伝のスパイス!これを気に入れば次もまたあるかも!」と冗談交じりに言った。

その日、待望とも言える初めての拓海の微笑みが見れたのだった。「あ、確かにうまい」と呟く拓海。それは美咲にとって心待ちにしていた瞬間だった。

その後も、二人の関係は少しずつ変わり始める。カフェの常連客たちからも「二人の距離、進展してるね!」という声がちらほら聞こえる。

美咲は時折拓海の耳元で軽い冗談を言ったり、ラテアートに遊び心を加えたり、様々な方法で彼を楽しませることに挑戦した。拓海は少しずつ心を開いていき、笑顔が増え、可笑しみを持つようになった。

「今日は特製パフェです!この可愛さ、どう思います?」

「確かに、可愛い。」拓海は真剣な顔をしながら答え、初めての彼の褒め言葉が美咲の心に響いた。二人の距離感が徐々に近くなっていくのを感じる。

やがて、笑いが生まれることで、彼女のユーモアと拓海の心が結びついていった。拓海が少しずつオープンになり、二人のやり取りも楽しいものに変わっていく。

美咲は次第に、彼に心を開くことができていった。常連客たちの温かい応援もあって、彼女は相手の笑顔を見られるたびに嬉しさが増していく。

そして最後、ある日、拓海はカフェにやってきた。

「美咲、いっぱい笑ったらいいことがあるって噂がある……」彼は言い始めた。

「そうそう、最近のお客さんたちも言ってたよ!」

拓海はプロポーズめいた表情で笑いかけ、美咲に微かにウィンクした。

その瞬間、美咲は幸せが溢れ出すのを感じた。自分の努力が報われた瞬間、それはまるで夢のようだった。お互いに心を開き、笑いの中で交わした思いは、カフェの空気に満ちていった。

ゆっくりと二人は約束を交わし、幸せな関係を築いていくことになった。カフェの常連たちの温かい支持も後押しし、笑いで満ちたハッピーエンドが待っていた。

この「恋するコーヒーメリッサ」は、ドリーミーでコメディな物語として、二人の間に生まれた小さな幸せが、日々のコーヒーの香りと共に広がっていく様子を描いたものである。

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