タイムスリッパー・ユウジ – 第1話

初めてのタイムスリップ

店の中は静かで、ユウジの集中している息遣いだけが聞こえてきた。古びたスリッパの修理は順調に進んでいた。新しい底材を取り付け、縫い直しを終えたところで、ユウジはふと思った。「これ、履き心地どうなんだろう?」そう考えながら、ついスリッパを試し履きしてしまった。

すると、突如、目の前の景色が変わった。町の景色や店の中が消え、ユウジの周りは緑の草原と、遠くには城が見える風景に変わった。空には太鼓の音が響き、何やら賑やかな様子。ユウジは驚きのあまり立ち尽くしていた。

「おい、そこの者!何をぼんやりしている!戦が始まるぞ!」と、大声で叫ぶ武士が近づいてきた。ユウジはその武士の鎧や兜を見て、ようやく現在の状況を理解した。どうやら彼は、戦国時代にタイムスリップしてしまったようだ。

「私、どこにいるんですか?」と、ユウジが驚きの声で尋ねると、武士はにっこりと笑って言った。「ここは、我が領地。お主、あの武将の使者ではないのか?」



ユウジはさらに混乱した。どうやら彼は、この地の武将に間違われてしまったようだ。しかし、ユウジは平然と答えた。「ええ、その通りです。ただ、私の持ち物を失くしてしまい…。」

武士はユウジの持っていた工具箱に目をつけ、「これがお前の持ち物か?」と尋ねた。ユウジは、その工具箱を開け、中の現代の工具を見せた。武士たちはその工具に興味津々で、一つ一つを手にとって見ていた。

「これは何だ?」と、一人の武士がユウジの持っていた電動ドリルを指差した。ユウジは、「これは、物を穴を開けるための道具です。」と答え、電動ドリルの使い方を実演した。

武士たちはその様子に驚き、ユウジに感謝の意を示した。そして、戦が始まる前に、ユウジを城へと案内してくれた。城の中で、ユウジはその土地の武将と出会い、彼の現代の技術や工具に興味を持たれることとなった。

何日か城で過ごした後、ユウジはスリッパを再び履くことで、自分の時代に戻ることができた。彼は戦国時代での経験を胸に、再び「ユウジの靴修理」の日常を取り戻すのだった。しかし、これから彼を待ち受ける多くの冒険に、ユウジはまだ気づいていなかった。

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