天才の逆襲

東京の大学に通う佐藤智明は、IQが180を越える天才でありながら、ちょっと変わった性格の持ち主だった。周りの友人たちからは「変わり者」と言われ、軽いあだ名まで付けられていた。

彼は自らの知識を駆使して日常生活のあらゆる問題を解決しようとする。しかし、彼のひらめきはいつも突拍子もなく、結果的には滑稽な結末を迎えることが多かった。彼が論理的に考えすぎるあまり、意外なところで周囲から反発されてしまうのだ。

ある日、友人たちと食事をしているとき、智明の目に入ったのは、クラスメイトの美香だった。彼女は笑顔が素敵で、知性も高く、智明にとっては憧れの存在。彼は彼女に告白することを決意した。

智明は自分がいかに科学的根拠を持って、美香に告白するかを考え、心の準備を整えた。彼はデータや理論を駆使して、彼女を納得させるつもりだった。「これで絶対に大丈夫」と、胸の内では自信満々だった。

そして、告白の日。智明は美香をカフェに呼び出し、緊張しながらも彼女の目を見て言った。「美香、僕は君を心から愛している。これはデータと論理的根拠に基づいた告白だ。」美香は彼の真剣な表情と、それに相反する突飛な告白に対して、最初は驚き、その後、爆笑してしまった。

「智明、あなた面白すぎる!」と言って、美香は笑い転げた。智明は気まずさを感じつつも、彼女の笑顔を見て少し救われた気持ちになった。だが、内心では「もっと良い方法があるはずだ」と反省し、再挑戦を決意する。

彼の頭の中で新たな作戦が浮かび上がった。それは美香を主役にした、あらゆる街中を巻き込む大規模なクイズ大会を開催することだった。智明は彼女がその優勝者になれば、彼女との距離を縮められると考えたのだ。

彼はすぐに企画を進め始めたが、すでに問題は次々に発生した。まず、開催日時を決めることに二日もかかり、次に参加者を募るために街中にポスターを貼りに行ったが、まったく反響がなかった。

クイズの質問を考える段階で、さらに問題に直面。智明は思い切って難易度を上げ過ぎてしまう。彼の知識を誇示したい一心で、マニアックすぎる内容に設定してしまったため、同級生たちが集まらなかったのだ。結局、彼は開催日の前日に再度企画を変更し、クイズの参加資格を「頭が良いだけではだめ!笑いのセンスが必要!」とした、完全に非論理的な方向へ。

クイズ大会当日、智明は一所懸命に準備を整えた。それでも当日を迎えると、思っていた通りの参加者数の欠如に愕然とする。会場には、主催者の智明と、参加者として来た数人の友人だけが目立っていた。彼らは遊び半分で遊びに来ただけで、本気で勝ちに来ているわけではなかった。

それでも智明は、「コツは楽しむことだ!」と言い放ち、無理やりクイズを始めることにした。だが、クイズが始まるや否や、智明の考えた質問には誰もまともに答えることができず、答えを聞くたびに参加者たちからは嘲笑の声が漏れた。結果、早々に彼のイベントはグダグダになり、参加者たちは次第に帰ってしまった。

彼はそれでも、美香が参加しているのを見つけた。彼女は良い思い出を作りたいと思って来たのだろうが、別の男と一緒に盛り上がる姿が目に入った。

智明は、もう逃げ出したくなる気持ちでいっぱいだった。彼はクイズ大会の最中に、一人で端っこに立ち、涙を流した。こうして、智明は自身のアイデアが完全な失敗であり、周囲の笑い者にされてしまったことを認識した。

大会が終わり、彼は完全に敗北感に苛まれた。美香とは距離が生まれ、はじめのような運命的な出会いの夢も跡形もなく消え去った。

智明はその後も様々な珍騒動を巻き起こし続け、彼の天才性はむしろ周囲の笑いの種となった。彼は「これが俺の運命だ」と受け入れることしかできず、恋愛に失敗した自分をただ見つめ続けた。
次第に彼の心には、「智明の逆襲」ではなく「智明の逆ギレ」と呼ばれる現実が刻み込まれていった。不器用な彼の冒険は、意外な形で幕を閉じることになる。