砂時計の旅人 – 第1話

アレックスの日常は、砂時計の力を使い、過去の出来事を変えることに夢中になっていた。小さな失敗や後悔の瞬間を修正することから始めた彼だったが、次第にその欲望は大きな出来事にも及ぶようになっていた。彼が今回変えようとしたのは、10年前の大きな交通事故だった。その事故で多くの人が亡くなり、さらに多くの人が怪我をした。アレックス自身もその事故で大切な人を失っており、その事故を未然に防ぐことで、彼の人生を大きく変えることができると信じていた。

彼は砂時計を逆さにして、10年前のその日に戻った。彼は事故の発生する場所に急いで向かい、事故を防ぐための行動をとることにした。彼は危険な場所に立ち入り禁止のサインを立てたり、通行人を避けるように警告したりした。結果的に、彼の行動によって事故は未然に防がれ、多くの人々の命が救われた。

アレックスはその場で胸を撫で下ろし、砂時計を元に戻して現在に戻った。彼は事故が防がれた現在の世界を楽しみにしていたが、戻ってきた現在は彼の予想とは大きく異なっていた。

テレビのニュースでは、大規模な洪水の被害が報じられていた。その洪水で数千人が亡くなり、さらに多くの人々が家を失っていた。アレックスは驚きとともに、この災害が自分の行動の結果であることを悟った。彼が10年前の事故を防いだことで、その場所に大きな商業施設が建設され、それが周辺の自然環境を破壊し、大規模な洪水を引き起こしたのだ。

アレックスは自分の行動が多くの人々の命を奪ったことに罪悪感を感じ、再び砂時計を使って過去に戻ることを決意した。彼は再び10年前のその日に戻り、今度は事故を防ぐことを諦め、商業施設の建設を止めるための行動をとることにした。彼は地元の住民たちとともに商業施設の建設反対運動を起こし、最終的に建設計画は中止となった。

しかし、再び現在に戻ると、今度は新たな問題が起きていた。商業施設の建設が中止となったことで、その地域の経済が大きく悪化し、多くの人々が失業していた。さらに、その影響で地域の治安が悪化し、犯罪が増加していた。

アレックスは自分の行動が新たな問題を引き起こしたことに絶望し、砂時計の力を使って歴史を正しく修復する方法を見つけることを決意した。彼は何度も過去に戻り、さまざまな方法を試みたが、どの方法も新たな問題を引き起こす結果となり、彼はどんどんと歴史の中で迷子になっていった。

アレックスは砂時計の力を使うことのリスクを痛感し、自分の選択と行動が未来にどれほどの影響をもたらすかを深く考えるようになった。彼は過去の出来事を変えることの難しさと、それに伴う責任を感じるようになり、砂時計の力を使うことに対する恐怖を感じるようになった。

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