竜の笛と消えた王都 – 第1章

その日から、エリオットの日常は変わり始めた。彼は、村で見かけるあらゆる竜に関する記号や伝説に注意を払うようになった。村の図書館で、古い文献を読み漁り、王都と竜の笛についての情報を集めた。夜は星を眺め、竜が彼に何を伝えようとしているのか、その意味を解き明かそうとした。

夢で見た竜の言葉は、エリオットの心に焼き付いていた。彼はそれを村の古老たちに話したが、ほとんどの者は彼の話を信じようとはしなかった。ただ一人、古老のマーリンだけがエリオットの話に耳を傾け、彼に古い伝説の本を手渡した。その本には、竜の笛が王都を守るために使われたという記録が残されていた。そして、もし笛が再び吹かれる日が来たならば、王都は天から降りてくるだろうと予言されていた。

エリオットは、この伝説を追い求めることを決意した。彼は、自らの手で竜の笛を見つけ出し、王都ラゼルを取り戻すために、旅に出ることを誓った。彼には、それが自分の運命であり、生きる目的であると感じていた。

村を出る前夜、エリオットは再び夢を見た。今度は、彼は古代の神殿に立っており、壁には竜の笛を奏でる人間の姿が描かれていた。そして、その人間がエリオット自身であると気づいた瞬間、彼は目覚めた。それは、彼が探し求める冒険への呼び水となり、翌朝、彼は何も持たずにただ一つの希望を胸に、旅立ったのだった。

こうして、エリオットの旅が始まった。彼の背中には、母が遺した古い毛布が包まれ、心には竜の笛の伝説が宿っていた。彼は知らなかった。この旅が、ただの冒険ではなく、彼の運命、そして全ての人々の未来を変える重大な旅であることを。そしてこの物語が、古い伝説と新たな伝説を繋ぐ架け橋となることを。

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