逆さまの成長

「ネガティブランド」では、全ての人が自身の心の奥に潜むネガティブな気持ちを具現化することができる。それは、憂鬱、自己疑念、孤独感といった感情がモンスターとして現れるという、奇妙でちょっぴり風変りな世界である。その主人公、タクミはいつも悲観的な考え方に悩まされる、どこにでもいる若者だ。

タクミの心の中のネガティブな気持ちは「ウジウジくん」という名の巨大なモンスターとして具現化され、彼の周りに毎日悪影響を与えていた。人々の笑い声や明るい視線がタクミには異様な敵意に感じられ、ウジウジくんの声が彼をいつも囁いた。

「お前はダメだ、何をやっても上手くいかない。」これは、タクミの日常の如く、彼を取り囲む呪文のようになっていた。

だが、ある日、タクミは友人たちであるお調子者のケンと、彼の妹でありタクミにとっては憧れの対象でもあるユリと共に「成長の泉」を探すことに決めた。泉と言えばポジティブなエネルギー溢れる、まるで魔法のような存在だ。飲むことでネガティブな気持ちを取り去り、真の成長ができると言われている。

「この泉に辿り着けば、変われるはずだ!」とやる気をみせる屈託のないケン。

「きっと、面白い冒険になるかな…」タクミは心の底から不安を抱えながらも、口には出さなかった。

旅立った三人は、その道中、数々のトラブルに巻き込まれる。まずは、「イメージの池」と呼ばれる場所に迷い込み、周囲の巨大な反映にタクミのネガティブさが影響を与え、彼自身が巨大ウジウジくんになってしまいそうになる。仲間たちの助けでようやく脱出することができた。

「これ、タクミのせいだよ!また余計な被害が……」と、ケンは笑いながら叱った。その表情には、冗談とも思える要素があった。

「笑うなよ!自分のせいで迷惑をかけたんだから……」タクミはうなだれた。

その後も、各地で様々な困難に直面し、タクミのネガティブな考えがどこかで役立つ瞬間もあったものの、結局は仲間たちを困らせることが多かった。そして、その状況が続くにつれ、何度も自分の内面を問い直すことを余儀なくされた。

「こんなことしてるのは、果たして成長なのか?」タクミは時折、涙が零れそうになりながら思っていた。

仲間の支えを受けながらも、タクミは「大丈夫、俺にはウジウジくんがいるからこの冒険も上手くいく!」と考える一方で、心の底では「本当に大丈夫なんだろうか」という疑念が渦巻いていた。

やがて彼らは、ついに成長の泉の位置を突き止めた。しかし、近づいてみると、泉には一つの試練が待ち受けていた。泉の周りには心の闇を具現化した人々がいる。彼らもまた泉を探し続けていたが、その心の黒い部分がモンスター「ウジウジくん」と化し、周囲を攻撃していた。

「タクミ、どうする?」その時、彼らの顔に不安と期待が混ざった表情が浮かぶ。タクミはまるで、不安をもって仲間を見つめた。思い悩みながらも、彼は自分が生きている世界の全てを肯定し、「俺も、成長がしたい!」との叫びを思い出す。

決意したタクミは、ウジウジくんと相対し、彼を制御しようと試みる。しかし、それは易しいことでなく、タクミは彼の力を解放してしまう。心の奥底にあった自信の無さや恐れが暴走し、そのモンスターは無敵のように、街を襲撃し、人々を恐怖の中に叩き込んでしまった。

「何てこった、どうしてこんなことに……」仲間たちが逃げ惑う中、タクミはただ呆然と立ち尽くしていた。成長の泉には本当に求めていたものはなかったのだ。それどころか、タクミ自身が生み出してしまったウジウジくんによって、彼自身も失いかけていた。

孤独と敗北感に包まれ、タクミは自分の行動がどんな悲劇をもたらしたのかを理解していた。盛大な失敗を引き起こした彼は、ネガティブランドを彷徨うことしかできなかった。

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