フローズン・マインド – 前編

前編 後編

「おい、目を覚ますんだ。」

寒さにうなされながら、ドクター・ヨシダは目を開けた。彼の前には、彼の同僚であり友人でもあるドクター・エヴァンスが立っていた。エヴァンスは無理にでも笑顔を作ろうとしているようだったが、その目には恐怖が隠れていた。周囲は極地特有の寒さと静けさが広がり、彼らの極北の研究施設の光だけが唯一の明かりだった。

「な、何があったんだ?」ヨシダは声が震えていることに気づいた。

「南極の施設から連絡が途絶えた。」エヴァンスが淡々と答えた。

エヴァンスの言葉が、ヨシダの頭に突如として重たい鈍痛を走らせた。南極の施設は彼ら北極の研究施設と同じく、人類の生存を研究するための場所だった。しかしながら、その過酷な環境と孤独感は一部の科学者たちの精神を壊しかねない恐ろしい場所でもあった。

「救援隊が組織されている。そして君もその一員だ。」エヴァンスの声は揺らぎなかったが、それは強制的に押し殺された恐怖から来るものだった。そしてヨシダは、その瞳に映る自分の姿が震えていることに気づいた。



南極へ行くことは、彼の理性を試す長い旅になるだろう。あの場所は寒さだけでなく、人間の心をも凍らせるような恐怖が存在する。しかし、彼は科学者として、そして同僚のためにもその旅に出なければならない。今、ヨシダはその重責を感じて、自分の心臓が砕けそうだと感じていた。

深呼吸をして、ヨシダは重い腰を上げた。「分かった、行くよ。でもエヴァンス、何が待ち受けているか分からないからな。」

エヴァンスは一瞬、目を伏せてから再び彼を見つめ、「誰にも分からない、ヨシダ。ただ、彼らを見捨てることだけはできないんだ。」と言った。

ヨシダは息を吐き出し、覚悟を決めた。未知の恐怖と向き合う覚悟、そして彼自身が壊れてしまうかもしれないという覚悟。しかし、それが彼の使命だと理解していた。

そして彼の南極への長くて孤独な旅が始まった。彼が見つけるものは何だろう?絶望か、それとも希望か。しかし、ヨシダは知っていた。結果がどうであれ、彼自身の精神は永遠に変わってしまうことを。