夜の囁き – 第4章: 1

二人は祭壇の前に座り、手を合わせて心を込めて祈り始めた。お香の香りがさらに強く漂い、神聖な雰囲気が家全体を包んだ。健一と美咲は互いに目を見合わせ、信じ合う気持ちを確認した。

「一緒に乗り越えよう」と健一が微笑みながら言った。

「ええ、私たちならできるわ」と美咲も微笑み返した。

二人は深呼吸をし、神主から教わった呪文を唱え始めた。呪文の言葉が家中に響き渡り、二人の声が一つになって怨霊に語りかけた。呪文を唱えるたびに、お香の煙が渦を巻き、まるで霊の未練を解放するかのように漂った。

「助けて…ここから出して…」

囁き声が再び聞こえたが、今回は恐怖ではなく、何か温かいものが二人の心に満ちてきた。霊が彼らの真摯な気持ちに応えているのを感じた。

儀式を続けるうちに、囁き声は次第に静まり、家の中には静寂が戻った。健一と美咲は深い安堵感を感じ、互いに抱きしめ合った。

「これで怨霊は成仏できたのかしら…」美咲は疲れた表情で呟いた。

「きっとそうだ。これで私たちも安心して暮らせるだろう」と健一は彼女を優しく抱きしめた。

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