深海の叫び – 第1章:禁断の遺跡 前編

ブリッジの奥で、中村が静かに話しかける。「斎藤さん、私はここで見えているデータと、その映像に込められた深い意味をどう受け止めればいいのでしょうか。あなたは、こうした現象をどう解釈されますか?」その問いは、単なる疑問ではなく、仲間としての信頼と、内面に潜む恐怖への叫びでもあった。

斎藤は一瞬、深い思索の表情を見せた後、穏やかに答えた。「私の考えでは、まずは全てのデータを集め、冷静に分析することです。科学者として、感情に流されることは避けねばなりません。しかし、君たちの不安はよくわかります。未知は常に恐ろしく、その全貌を捉えようとする我々の努力は、時に心を打ちのめすものになる。しかし、だからこそ、我々は真実に向き合う必要があるのです。」

ローレンスは、その会話に耳を傾けながらも、自身の内面で湧き上がる情熱を抑えきれずに、低い声で付け加えた。「理論だけでは捉えきれぬもの、感覚だけが伝えるものがある。石に刻まれたこの彫刻は、ただの芸術作品ではなく、何か古代の儀式の証拠なのです。私は、この神秘に触れることが、かつて失われた叡智と再び接触するための鍵だと信じています。」

その後、艦載ドローンが遺跡に向けてゆっくりと飛び立ち、カメラ映像がリアルタイムでブリッジに送られ始めた。モニターに映し出されるのは、曲がりくねった石の通路、緻密に彫り込まれた模様、そして長い年月を経たことを物語る苔むした壁面。全体が、まるで時の彼方から蘇ったかのような荘厳な情景であった。

技術担当の一人が、ドローンの映像を指差しながら言った。「ご覧ください、この部分の彫刻。幾何学模様に加え、動物の姿を模した彫刻も見受けられます。これが、単に装飾目的のものか、それとも何らかの儀式に使用された象徴なのか、慎重に解析する必要があります。」

中村はその映像を凝視しながら、静かに頷いた。「確かに、これらの彫刻はただの美術品ではないように感じます。遺跡全体に、計り知れない歴史と、何か重大な意味が込められているのでしょう。皆さん、この謎に迫るための情報は、必ず後世に伝えるべきものだと思います。」

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