深海の叫び – 第1章:禁断の遺跡 前編

船内の静寂を破るかのように、技術担当の一人がモニターに指を走らせながら報告した。「最新のセンサーが、遺跡の周辺で異常な温度分布と磁場の変化を検知しました。通常の海底環境では考えられない数値です。」その言葉に、ブリッジ内は一瞬、ざわめきに包まれた。

中村は、もう一度確認するように装置の画面を見つめながら語った。「これほどの異常は、まさに人知を超えた力の働きがあるのかもしれません。私たちは、この遺跡の謎を解明するために、慎重に調査を進める必要があります。どうか、皆さん、体調には十分気を付けてください。」

斎藤は、深い呼吸をひとつしてから、静かに決意を示すかのように話し始めた。「まずは、艦載ドローンをこの遺跡の近くまで飛ばして、内部の構造を把握しましょう。そのデータをもとに、我々が踏み込むべき進路を決定するのです。確かな科学的根拠なしに、この未知の領域に無謀に挑むわけにはいきません。」

ローレンスは、再びその独特の笑みを浮かべながら加える。「だが、この遺跡には、ただの石塊以上の何かが息づいている。目に見えぬ古の力、もしくは、封印された神の意思かもしれません。そう考えると、我々の存在そのものが、この古代の叡智と繋がるための試練かもしれませんね。」

探査艇の艦内は、各々の専門知識と過去の記憶、そして未知に対する期待と恐怖が入り混じる空気に包まれていた。斎藤はモニターに目をやりながら、細かいデータを指示通りに解析し、仲間たちに必要な情報を即座に提供していく。その手は、かつて家族を失ったあの日の記憶を思い起こさせるかのように、震えながらも確固たるものだった。

「この映像を拡大し、詳細な解析を開始してください。特に、彫刻に刻まれた模様の数値パターンと、磁場の異常については、最優先で調べる必要があります。」斎藤が静かな決意と共に命じると、技術担当の一人が迅速に操作に取り掛かった。

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