幻の狭間

静けさが支配する長い田舎道を歩いていると、どこか不穏な空気を感じる。美咲は元気いっぱいで、いつものように友達と遊ぶことを楽しみにしていた。しかし、村は異常な静けさに包まれており、子どもたちが次々と姿を消すという噂が立っていた。

「また、さくらちゃんも消えたんだって…」

美咲は、おばあさんがそう言っているのを耳にした。いつも笑っている顔だったさくらが、今は姿を消してしまったなんて信じられない。仲間たちの一人ずつが、夢の中に消えていくような不気味さが、美咲の心をかき乱していた。

ある日、友達と遊んでいると、ふと村の外れにある古びた神社の存在を思い出した。小さな美咲は、興味本位でその神社を訪れることに決めた。神社へ向かう途中、風が強く吹きすさぶ中、彼女の心には薄い期待が膨らんでいく。「もしかしたら、友達を救う方法があるかもしれない!」

神社の扉がきしむ音を立てながら開き、美咲は中に足を踏み入れた。そこには、黒い石でできた不気味な彫像が佇んでいた。その彫像の目は、どこか彼女の心を読み取るかのように光る。

「ここで何かできるかも…」

彼女は、彫像の前にひざまずき、自分の無邪気な願いを捧げた。「友達を返して!」

すると、次の瞬間、耳元にかすかな声が聞こえてきた。「ここにいる…助けて…」美咲は驚き、音のする方に目を向ける。消えた友達の声がそこにあった。

「さくらちゃん!」

彼女の心は弾み、すぐさま神社で不吉な儀式を行うことを決意する。必要な材料を集め、儀式を始める。儀式の中で呪文を唱え、心から願う。すると、村中にかすかな光が漂い、まるで何かが目覚めるような感覚を得た。

しかし、その光は彼女の周りの空気を歪めていく。美咲の心の中で渦巻く期待と、不安が入り混じっていく。でも、彼女は止まることができなかった。

呪文が終わった瞬間、神社の空間が異様に広がり、まるで別の世界へと引き込まれていく感覚に襲われた。美咲は、その中で友達たちの姿を探し始めた。しかし、彼女が目の前にいたのは、灰色の霧に覆われた空間だけだった。

「さくらちゃん…?」

周りは暗く、どこからともなく響く囁きが彼女の耳を打つ。「救ってほしい…」それはまるで嘲笑うかのようだった。目の前に現れたのは、さまよう霊たちだった。彼女は恐怖で体が震えたが、続けて声を上げた。

「みんな、どこにいるの?!」

何も反応はない。ただ、暗闇が彼女を飲み込むように迫ってくる。まだ彼女は、自分が開けた扉が恐ろしい世界につながっていることに気づかなかった。

次第に、暗い空間の中に封じ込められた美咲は、もがき続けた。「私はあなたたちを助けるために来たんだ!」

しかし、その声は虚しく響くだけで、周囲が彼女を嘲るように笑っているかのようだった。彼女の無邪気な願いは、もはや救済ではなく、さらなる恐怖を呼び起こす呪いとなった。

美咲は、自らの行動が村にどのような影響を及ぼしたのかを知ることはできなかった。彼女の元気な姿が消えると、その空間に広がる暗闇が増し、村全体が悪夢に包まれていく。彼女の笑顔は、そして彼女自身も、永遠に取り残される運命に陥ってしまった。

結局、村は彼女の願いによって闇に呑まれ、誰一人としてその救済を得られず、消えた子どもたちの声は、今も神社に響き渡る。美咲はただ、永遠に彷徨う霊となって、その場に取り残される。

「私の笑顔は、もう誰の目にも触れないの…」彼女の心の中で、泣き叫ぶ声が消え入る。

タイトルとURLをコピーしました