静まり返った田舎の町。その町の一角に、一際古びた図書館が佇む。
智子はその図書館に向かい、古い文献の調査に取り掛かっていた。彼女の心の中には、未だ解決できない母の失踪というトラウマが重くのしかかっていた。その記憶が、彼女の調査ジャーナリストとしての職業人生を支える一つの原動力であった。
しかし、母を失った痛みは年々増すばかりだった。彼女は過去に目を向けずにはいられなかった。探し求めている真実は、ただのニュースのネタ以上の意味を持っていた。
調査を進める中で、智子は古い新聞記事に目を留める。それは、数十年前にさかのぼる連続失踪事件についてのもので、そこには信じられないことに、彼女の母の名前も記されていた。彼女は驚愕し、その記事をじっくりと読み込んだ。
さらに調査を深めていくうちに、智子は町の中で語り継がれている「影」という怪談に辿り着く。それは、「影」と呼ばれる存在が、この町の住人を次々と奪っていくというものであった。智子は町の人々に話を聞くが、誰もがその「影」については口を閉ざした。
ある晩、智子は図書館で深夜まで調査を続けていた。その時、不意に背後で何かが動いた気配を感じる。振り向くと、そこには誰もいなかった。彼女はぞくりとした感覚に襲われ、胸が高鳴る。
「薄気味悪い。この町には何か、恐ろしい秘密が眠っている。」
智子は自分の直感を信じ、ますます調査に没頭する。彼女の中には、母のことを思い出させる影が常に揺れ動いていた。その影は、恐れとともに彼女に襲いかかる。
日々が経過するにつれ、智子は夢の中で母の幻影を見るようになる。彼女の母はどこか遠くから、自分を呼んでいるようだった。
「助けて、智子…」
その声が現実と夢の境界を曖昧にしていく。
ある朝、智子は町の片隅で、異様に付近の住人から避けられる屋敷を見つける。好奇心を抑えきれず、彼女はその家の中に入る。中は埃臭く、ほこりが舞っていた。
数日後、智子はその屋敷の主人に出会う。彼は彼女に、数十年前に失踪した人たちの真実を知っていると語りかけてきた。
「君の母もその影に囚われたのだ。もしかしたら、君ももうすぐ捕まるかもしれない。」
智子はその言葉に不安を抱き、恐怖が心を蝕んでいく。
次第に町の住人がどんどんと消えていく。そして、智子の周りには不気味な現象が起こり始める。自宅に帰ると、彼女の部屋の壁に黒い影が映り込み、彼女をじっと睨んでいるように見えた。
「もう逃げられない…」そんな感覚が彼女を苛む。
智子は次第に精神が不安定になり、現実と夢の狭間で苦しむ。毎晩、影の正体を求めて彷徨い続けた。
疲れ果てた智子は意を決して町の広場に登場し、人々が影の正体について話すことを誘発する。しかし、誰一人としてその影と戦おうとはしなかった。
絶望の底に落ちた智子は、意を決して自ら「影」に向き合う決心をする。ある晩、彼女は古文書に記された通りに儀式を行い、その影を呼び出した。
すると、近隣の景色が変わりゆき、まさに彼女が追い求めた真実が無限に広がっていく。その中で彼女は、隠された影の正体が彼女自身の過去であり、恐怖なのだと悟った。
そして、彼女はそこで見たものは、全ての人々が恐れていた運命—彼女の母が影に囚われ、その呪縛によって生きながらにして命を奪われていた。彼女自身もまた、その影の中に飲み込まれようとしていたのだ。
強烈な痛みと後悔が彼女を襲う。智子は涙を流しながら、「敵は私自身だったのかもしれない」と思い知らされる。
その瞬間、彼女の心に灯っていた母の幻も消えつつあり、恐怖が真実に伴う形で一つになってしまった。
彼女は母と再会し、優しい笑顔で見つめ合ったが、それはもはや温もりのある瞬間にはならなかった。
智子は自らの運命を、そして恐怖が彼女の中に潜むことで何を意味するかを受け入れなければならなかった。
彼女は、その町の影から逃げられないことをようやく理解して、新しい朝を迎えることは到底できないだろう。
物語の最後、智子は町の住人が恐れていた運命に直面し、望んでいた母の記憶を受け入れることで、彼女自身の心に潜む闇と向き合った。