ユウマは、東京都内の大学に通う20歳の学生である。小さな頃から自分の夢を心に抱いていたが、周囲の期待、特に両親の「安定した仕事に就け」というプレッシャーに押しつぶされ、自信を失っていた。彼は音楽が好きで、自作の曲を作るのが趣味だったが、両親には「就職してほしい」と強く言われ、心の奥底で葛藤を抱えていた。
そんな中、ある晩、ユウマは自宅のベランダで星空を見上げていた。澄んだ空気の中、無数の星が瞬いている。彼は一度目の流れ星を見ると、心の中で「もう一度だけ、少しの救いがほしい」と願った。すると、星が尾を引いて空を横切り、まるで彼の願いを聞き入れたかのようだった。
翌朝、ユウマはいつも通りに大学に向かう途中、町の公園で見知らぬ老人と出会った。その老人は髭をたくわえ、真っ白な髪をしたケンジという名の男だった。初めは何の気なしに彼と話をしていたユウマだったが、次第に彼の話に引き込まれていった。
ケンジは不思議な力を持っていた。彼曰く、流れ星を操ることができ、名前のない願いを叶える力を持っているとのこと。ユウマは教えられるままに、流れ星の舞うような幻想的な話に耳を傾け、自分の悩みを打ち明けた。
「自分を見失ってしまいそうなんです。本当にやりたいことは音楽なのに、どうしても不安が抜けなくて…」とユウマが言うと、ケンジは優しく微笑みながら言った。「大切なのは、あなた自身の内なる声に耳を傾けることだよ。流れ星は時に、願いをかなえてくれるが、その代償もあることを忘れないでほしい。」
ユウマはその言葉の意味を考えながら、次第にケンジとの交流を深めていく。彼はケンジと過ごす時間を通じて、少しずつ自己への信頼を取り戻していった。音楽に関する本や楽器が並ぶカフェで、彼は自作の曲を弾く機会を得た。その瞬間、彼は自分の中に芽生えた音楽への情熱を再確認した。
しかし、日が経つにつれ、ケンジの持つ流れ星の力がユウマに取り付くようになった。彼は自らの意志とは関係なく、流れ星の願いを形にしようとするあまり、周囲との関係がぎくしゃくし始めた。
ある晩、再び流れ星を見上げたユウマは、「もっともっと救ってほしい」と強く願ってしまった。その瞬間、空から降りかかってくる光の粒。それが彼に様々な“願い”を叶える力を与えるが、その代償は彼の環境や周りの人々に影響を及ぼし始める。
ケンジはその現象を見て、「願い事が増えると、失うものも増えるんだ。もし君がその力を使い続けたいのなら、リスクも覚悟しなくてはいけない。」と警告した。
ユウマはケンジの言葉を無視し続け、どんどんと自分の願いを追求した。自分の音楽が認められるよう、アルバムを出すためのチャンスをつかんだり、友人との関係を優先することで、彼には手に入れたいものが増えていった。しかし、周囲がだんだんと消えていく感覚が付きまとっていた。
ついに彼は、自身の行動が他者に深刻な影響を及ぼしていることに気付く。親友の新太が「もうお前の音楽なんて興味がない!」と泣きながら去って行った。その瞬間、ユウマは心に不安がよぎった。いつも傍にいてくれると思っていた人々が、そして彼が「願って」得たものたちがどんどん離れていく。彼は「何が本当に必要なのか」を見失ってしまった。
ある晩、再び流れ星が空を流れると、ユウマは思わず「もう願いはしない」とつぶやいた。
すると不思議なことに、その瞬間、彼の体に何かが流れ込んできた。流れ星の力が彼の心の奥にあった恐れを洗い流していくのを感じたと同時に、目の前に立っているケンジが微笑みを浮かべて言った。「君はついに自分の道を見つけたようだね。」
ユウマはそれがどういう意味なのか分からなかったが、そこにいたいという気持ちが強まっていた。
数日後、ユウマはケンジと話し合い、自らの願いを一つだけ叶えることに決めた。「私の選した音楽を忘れないでもらえるか?」という願いが彼の口からこぼれた。すると、ケンジは彼に微笑むと、流れ星の力を使ってユウマの求めていたものを与えてくれると約束した。
ユウマはその瞬間に、目の前が明るくなった。彼は自分の音楽を再び愛し、やがてその道を進む覚悟ができた。これからは他の人との関係も大事にしつつ、自分の夢を果たそうと決意する。
数年後、ユウマは小さな音楽イベントを開くこととなった。そこで彼は、自作の曲を唄いながら、ふと流れ星のことを思い出した。その流れ星の願いが、彼の人生を大きく変えたことを実感すると共に、彼が求めたものの大切さを実感した。
終わりに近づくにつれ、ユウマは何が本当に大切なのかを理解する。今、笑顔に囲まれた彼が、流れ星への願いによって歩んできた道を確信し、心からの感謝の意をもって、彼の音楽の旅を続けるのであった。