東京の大学キャンパス。若き天才、佐藤俊介は、心理学を専攻する優秀な学生だった。彼の好奇心は、心理的なトラウマや人間の闇に向けられ、それに対する理解を深めようと模索していた。しかし、そんな彼の生活は、友人の自殺未遂によって一変した。友人の名は鈴木恭介。彼は普段から明るく、周囲の人々を楽しませる存在だったが、その裏に隠された真実は、俊介の知らないところで進行していた。
俊介は、鈴木の突然の悲劇に打ちひしがれた。彼は自分が何か助けられることができたのではないか、と思い悩む。鈴木を助けられなかったことへの後悔、そして、この状況の背後に潜む真実を解き明かしたいという強い思いが、彼を駆り立てた。
彼は、鈴木の周りの人々に話を聞くことから始めた。彼のSNSを調べ、そこに残された暗いメッセージや謎の投稿に目を通した。鈴木は、ある投稿の中で「誰も私のことを理解してくれない」とつぶやいていた。友人たちの証言も、彼の痛みを十分に理解していなかったことを語っていた。
調査が進むにつれ、俊介は心理学に関する知識を駆使して鈴木の過去を探り始める。彼の家族や元恋人との関係にも触れ、次第に鈴木が抱えていた心の闇へと迫っていく。しかし、俊介は鈴木の問題に向かい合うあまり、知らず知らずのうちに自分自身の過去の傷とも向き合うことを余儀なくされた。
驚愕の事実が次々と明らかになっていく。鈴木は幼少期に父親からの虐待を受けていた。そして、その影響から、彼は常に周囲の目に自分を合わせようと苦しんでいたのだ。そんな彼に対し、周囲の人間の嘘や嫉妬が重なり、更なる苦痛が加わった。俊介自身もまた、過去に親友を失った苦い経験があり、その影は彼を苛むこととなった。
俊介は鈴木の真実に迫る中で、自分の中の恐れや罪悪感を再確認することとなる。彼は心理学の理論を駆使し、鈴木の心の闇を解き明かそうと努力したが、次第に彼自身がその闇に呑まれていくのを感じた。彼の周囲には、鈴木を取り巻く小さな嘘が連鎖し、友情の絆は次第にほころんでいった。
ある日のこと、俊介は鈴木の元恋人と接触し、意外な事実を聞かされる。彼女は鈴木に深い愛情を抱きながらも、彼の心の奥に潜む恐れと闇を理解できずに別れを選んだという。その言葉は俊介の心に火をともすようだった。彼は自分の知識を用いて、鈴木を救う方法を探し続けた。
最後の調査が進む中で、俊介は思わぬ人物が鈴木の状態に大きな影響を与えていたことに気づく。それは、鈴木の親友である高橋だった。高橋は、鈴木に対し嫉妬心を抱いており、同時に鈴木を精神的に追い込むような行動を取っていた。俊介は、鈴木のことを思い、真正面から高橋に向き合うことを決意した。自らの過去を胸に、彼は高橋に真実を訴えかけた。
しかし、高橋の反応は予想外だった。「鈴木があんな風になるなんて、俺のせいじゃない」と彼は言い放った。俊介は、その言葉がどれほどの冷酷さを秘めているかを理解し、ショックを受けた。彼は、鈴木だけでなく、自身の大切な友人関係をも守れないのかもしれないと思うと、絶望が胸に迫った。彼は高橋に、鈴木の過去と彼が受けていた苦しみを伝え、その苦悩を理解するよう促した。
だが、彼の真剣な訴えも高橋には届かず、やがて緊張が高まり、二人の間に感情的な衝突が起こる。俊介は冷静に真実を追求しようとしていたが、次第に自分の心の闇に飲み込まれ、高橋との確執が彼自身をさらに苦しめていった。結局、俊介は高橋との関係を断たなければならなかった。これで鈴木を救えるという希望は消え、中途半端な結果しか残らず、俊介は完全なる孤独の中に置かれてしまった。
鈴木の状態は悪化の一途を辿っていた。彼の周囲にいたはずの友人たちの嘘や嫉妬が彼の心をさらに追い詰めていると知りながらも、俊介はその真実を解明することができなかった。ついに鈴木が自ら命を絶つ日がやって来た。
俊介は力を失い、打ちひしがれた。彼が知った真実は、他者を守るためのものではなく、最終的に彼自身が多くの仲間たちを傷つける結果に繋がったのだ。彼は暗い未来を呪い、自らの心の奥底に深く潜り込んでいった。