陽斗は、仲間たちと相談しながら、石畳に刻まれた模様を一つひとつ確認していく。ミカエルは、古文書の知識を頼りに、どの順番が正しいのかを推理し、エリナがその指示に従って杖先から淡い光を放つと、石の床が音もなく開かれて、新たな通路が姿を現した。
通路を進む中で、壁に描かれた壁画が次第に明瞭になっていく。そこには、かつての選ばれし者が虚無の王を封じるために戦った壮絶な光景が描かれており、エリナは目を見張った。「この壁画は、あの日の激戦を語っている。私たちが今歩んでいる道が、ただの探索ではなく、かつての英雄たちの意思を継ぐためのものだと感じさせます。」
その時、突然、暗がりの中から鋭い声が響いた。
「邪魔するな、愚か者ども！」
一行は驚き、すぐに構えた。扉の向こうから現れたのは、黒衣に身を包んだ悪しき魔術師集団であった。彼らは、遺跡の秘密を狙い、何人かの魔術師が杖を振るいながら一斉に攻撃を仕掛けてきた。
「来るぞ！」
ロレンスが叫び、剣を抜いて前に飛び出す。エリナは杖を高く掲げ、攻撃の合間に防御の呪文を唱え、ミカエルは冷静な眼差しで状況を見極めながら、陽斗に合図を送った。
陽斗は、心の奥底に眠る領域能力の存在を強く感じ、深呼吸をした。突如として、彼の視界が変わり、周囲の空間が激しく歪み始めた。まるで、現実そのものが彼の意志に従うかのように、壁や床、さらには敵の攻撃までもが一時的に凍りついた。
「これが……俺の力か！」
彼は叫びながら、その新たな力を全身で解放した。光と影が交錯する中、魔術師たちの呪文が跳ね返され、敵の攻撃は見事に打ち消された。
ロレンスが陽斗の活躍を目の当たりにし、剣を振るいながら言った。「見たか、陽斗！ その力こそ、この遺跡の秘密を守る鍵となるだろう！」
エリナも、仲間たちの安全を確保しつつ、静かに微笑みながら付け加えた。「私たちは、この試練を乗り越えなければならない。遺跡の奥深くに隠された真実が、未来への道標となるのです。」
