月明かりの下、リカは深い興奮を覚えながら研究室の机に向かっていた。今夜の実験は彼女の月に対する情熱の集大成だった。特製の装置を使い、月光の特性を測定しようとしていた。彼女の仮説は、月光にはまだ人類が知らない特別なエネルギーが含まれているというものだった。
「うまくいけば…」彼女は小さくつぶやきながら、機器の設定を確認した。
それを聞いた助手のカナは、「リカ先生、本当に大丈夫ですか? これまでのデータとは大きく異なる値が出るかもしれませんよ。」
リカはにっこりと笑った。「心配しないで、カナ。私たちは新しい真実を探求しているんだから、リスクは避けられないよ。」
研究室の中に響くのは、月光を受け取る特製のセンサーと機器の音だけ。リカは、最終調整を終えてスイッチを入れた。
すると、一瞬の光が室内を包み、リカは強烈な眩暈を感じた。彼女の意識は飲み込まれていくようで、周りの研究室の景色は霞んできた。
目を開けたとき、彼女が目の前に見たのは、無数の星々と奇妙な風景だった。広大な灰色の土地に、奇妙な形をした植物が茂り、彼女の知っている生物とは全く異なる姿の生き物が歩いている。月のクレーターや地形はそのままに、まるで別の世界のようだった。
「これは…?」リカは驚きと混乱で固まってしまった。
足元には、その特製の装置が落ちていた。しかし、彼女の手元には何もなく、周りにはカナの姿も見当たらない。
リカが困惑していると、不意に柔らかな声が聞こえてきた。「あなたは、どこから来たのですか?」
彼女が振り返ると、美しい白い衣装を纏った青年が立っていた。彼の顔は穏やかで、目は深い青色をしている。彼はリカに手を差し伸べ、彼女を立たせてくれた。
「私はユウト。こちらの世界の王子です。」彼は優雅に自己紹介をした。リカは彼の前に立ち、異世界の王子との出会いに心臓が高鳴るのを感じた。
こうして、二つの異なる世界が交差する運命の物語が始まった。