古びた手紙の秘密 – 第3話

第1話 第2話 第3話

アカリが港町から戻って数日が経った頃、実家の電話が静かな夕食の時間を割るように鳴り響いた。母の声は普段よりも少し緊張した調子で、「アカリ、ちょっと話があるのよ。古い写真と、もう一通の手紙らしきものが出てきたの」と告げる。その瞬間、アカリの胸にざわめきが走った。祖母の部屋からはすでに大半の荷物を片付けたと思っていたが、まだ見つかっていないものがあったのだ。

時間を置かずに実家へ足を運ぶと、リビングのテーブルの上に一冊のアルバムと、やや黄ばんだ封筒が置かれている。アルバムのページをめくっていくうちに、アカリはある写真に思わず目を留めた。そこに写っていたのは、まだ若い頃の祖母と、やはり若き日のカズマと思われる男性。二人の姿は少し遠慮がちに並んでいるようにも見えるが、その表情はどこか穏やかで、互いに寄り添うような雰囲気を醸し出している。アカリはまるで、写真の中の二人が自分に語りかけてくるような錯覚を覚えた。

「これ、絶対にあのカズマさんだよね。雰囲気が今も全然変わってない気がする。」アカリが食い入るように写真を見つめながらつぶやくと、母は「そうなのかしら。私にはわからないけど」と首を傾げる。その口調は興味がないわけではなさそうだが、複雑な感情が入り混じっているようでもあった。

タイトルとURLをコピーしました