メロディー・ラブレター – 第1話

第1章: 古びたピアノ

街の片隅、様々な古物が所狭しと並べられた市場。その中でも、カイの目を引いたのは古びた木製のピアノだった。彼は近づき、指を軽く鍵盤に触れた。一音、また一音と響き、彼の心はその音色に引き込まれていった。昔、子供の頃に憧れていた音楽の夢が、この市場で再び彼の心を打った。

カイは大学を卒業後、地元の企業に就職した。忙しい日々の中で、かつての音楽への情熱は薄れていってしまっていた。しかし、このピアノの音色は、彼の中の抑えきれない情熱を再燃させた。ピアノの前で座り、久しぶりに鍵盤を弾いてみる。不器用ながらも、彼の指からは心の底から湧き上がるメロディが流れ出た。

周りの人々もカイの演奏に心を奪われ、彼の周りには次第に人だかりができていった。演奏を終えると、拍手が起こった。その中の一人、年配の男性がカイに近づいてきた。「このピアノ、君に合っているね。」と微笑む。男性は市場の店主で、このピアノの前の持ち主の話をカイに教えてくれた。昔の名ピアニストのもので、多くのコンサートで使用されていたという。

カイはその話を聞きながら、自分がこのピアノと出会ったのは運命だと感じた。彼は決意を固め、ピアノを購入することを決める。店主もカイの情熱を感じ取り、特別な価格で彼に譲ってくれることになった。

家に帰る途中、カイはピアノを自宅に持ち込む方法を考えた。友人数人に頼み、ピアノを家まで運ぶ手伝いをしてもらうことに。彼の家のリビングに古びたピアノが置かれた瞬間、部屋全体がその存在感で満たされた。

カイは再びそのピアノの前に座り、深く息を吸い込む。そして、鍵盤を弾き始める。その音色は、彼の心の中に秘められていた情熱や夢、悲しみや喜びを、ひとつひとつ表現していった。

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