亜美の決断

亜美は東京の繁華街にある著名なアートギャラリーのキュレーターだった。彼女は毎日、氷のように冷静で、仕事に対する情熱を人一倍持っていた。高い評価を受ける中、彼女は自分のキャリアを何よりも優先してきた。

ある日、彼女のオフィスに一通のメールが届く。フリーランスのアーティストである龍也の作品が展示されたいという申し込みだった。彼の独特なスタイルや自由な発想に惹かれ、亜美は展示の決定をする。しかし、その後彼に実際に会った時、亜美の心は大きく揺らいだ。

龍也は無邪気で、どこか眩しいような存在感を放ち、亜美の冷たい殻を少しずつ溶かしていく。展示のための打ち合わせを重ねる中で、二人は次第に親しくなり、亜美は自らの感情に戸惑うようになった。仕事を優先すると決めていたはずなのに、龍也の存在がいつも頭から離れなかった。

彼と過ごす時間は自身のキャリアに影響を与えるかもしれないという不安を抱えつつも、彼の作品や魅力に心が引き寄せられる亜美。彼との関わりの中で育まれるロマンチックな感情が、亜美には驚きであり、同時に恐れでもあった。

ギャラリーの展示会の日が近づくにつれ、亜美はますます葛藤を抱えるようになる。固い決意とは裏腹に、龍也に対する想いに抗えなくなってきた。彼の作品がアート界で注目を集めるにつれ、亜美の心の中も次第に彼へ向けられていく。表向きは冷静を装いながらも、内心は不安と葛藤で穏やかではなかった。

展示会の準備が進む中、亜美は自らの選択が二人の未来に影響を及ぼすことを理解し、自問自答を繰り返していた。彼女は自分のキャリアを守るために、誰もが羨ましい立場であることを意識しつつ、龍也との距離を置くことを決めるが、実行するのは簡単ではなかった。

展示会が成功を収めたその日、亜美は喜びと同時に切なさを抱いた。周囲からの祝福を受けている彼女の心の奥底には、龍也との別れの痛みがくすぶっていた。彼と一緒に過ごした時間が、まるで夢だったかのように感じられ、この成功を彼と分かち合うことができない現実が重くのしかかっている。

展示会当日、亜美は満面の笑みで訪れた来場者を迎え入れた。展示された作品はどれも素晴らしいものであり、龍也の才能が光を放つ瞬間を亜美は誇りに思っていた。お客様からの称賛に気を良くしつつも、彼女の心の中には虚しさが広がっていく。

展示会が終わった後、亜美は感謝の意を伝えるために龍也に連絡を取ろうとした。しかし、彼の姿はもうギャラリーにはなかった。彼の独自のスタイルを掲げた作品は展示されていたが、彼自身はもう他の仕事に取り掛かっている可能性が高かった。冷静を保ちつつも、亜美の心は不安に駆られた。

件A、亜美は仕事が優先だと決めて、龍也に会わないことにした。しかし、彼女の心は彼への未練で一杯だった。彼の無邪気な微笑みや、自由な発想に触れたときの感触が、亜美を離さなかった。

数ヶ月が経ち、彼女は自身の選択を悔い始めていた。仕事は充実していたが、心の奥には龍也との思い出が影を落とし続けた。展示会の成功も彼との別れと同時に感じた孤独感を消すことはできなかった。そんなある日、亜美は自分が本当に求めていたものは何だったのかを考えた。

彼女にとって、愛かキャリアかという二者択一の選択は甘くないということを知った。展示会の成功は一瞬の栄光であったが、その影は永遠に彼女の心に残り続けた。亜美にとって、龍也との別れは単なる選択ではなく、二人の未来に大きな影響を与える出来事であった。

果たして、亜美は自らの選択をどう受け止めるのか。彼女の心の中に残る愛の曖昧な感情は、終わりのない葛藤の始まりであった。