星降る夜の奇跡 – 第2話

第1話

サヤは朝の冷たい空気を全身に感じながら、古民家の玄関をそっと開ける。昨日とはまた違った風のにおいと、小鳥のさえずりが遠くから聞こえてくる。今日は村をもう少し歩いてみようと決めていた。ここに移住してからまだ日が浅く、村の全体像もよく把握できていない。昨日は荷物の整理でほとんど外へ出られなかったこともあり、サヤは朝食を簡単に済ませてさっそく外に出る。せせらぎの音がかすかに聞こえるほうへ足を向けると、どうやら川が近くにあるらしいと思った。道なりに進むうち、小道を抜けた先に静かな川岸が見えてきた。

川沿いの石の上に腰を下ろすと、水面は透き通っていて、朝の光を受けてきらきらと輝いている。まだ少し肌寒い気温に、サヤは薄手のカーディガンをぎゅっと抱き寄せるようにして川の流れを眺めた。すると、少し離れた場所に一人の青年が座り込んでいるのが目に入る。妙に真剣なまなざしでノートを見つめているようだ。さりげなくその姿を観察すると、服装こそシンプルだが、そこに描かれているのはどうやら星の図のようにも見える。サヤはよくわからないまま、しかし何か興味がかき立てられるような気持ちでそっと近づいていった。

彼はサヤの足音に気づいたのか、はっと顔を上げる。その瞬間、ノートを慌てて閉じようとしているのがわかった。気まずそうな様子を隠せない彼を前に、サヤは少し申し訳ない気持ちになりながら小さく頭を下げる。

「ごめんなさい。驚かせちゃったかな。ここ、いつも来てる場所?」

青年は目を伏せ、少したどたどしい口調で答えた。「いや、なんでもないんだ……。ここの川岸は、静かで考えごとがしやすいからさ。ノートを見られたの、恥ずかしいんだよね」

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