恋する計算式

東京の大学生、中川優は、数学の天才でありながら、恋愛に関しては全くの素人だった。彼女は数式を使って、様々な恋愛のパターンを分析したり、恋愛感情を解明しようと試みたりしていた。しかし、いざ自分が恋に落ちることを想像するだけで、心は不安でいっぱいになった。

ある日、彼女はサークル活動で、お調子者の男子生徒、佐藤健太と出会う。彼はクラスの誰からも笑いを取れるタイプで、いつも周囲を明るくしていた。しかし、その一方で、彼のドジな部分が目立ち、何かと運に見放されたような日々を送っていた。 最初の出会い、優はそのお調子者を一瞥しただけで、心の中で「この人、絶対に恋愛対象ではない」と決めつけてしまった。

しかし、健太は、優の冷静な印象とは裏腹に、彼女の心をわしづかみにする才能を持っていた。健太は何をやってもドジで、サークルのイベントでのアクシデントも数多く起こした。それでも、彼が引き起こす笑いや楽しさは、優の心に少しずつ温もりをもたらしていった。「あれ、これってもしかして…」と、優は感じ始めた。

その日の帰り道、優は健太が数学の問題に詰まっている姿を見かけた。彼は目を閉じ、顎に手を当て、「これくらい簡単な問題なのに、なんでできないんだろう…」と独り言を言っている。優は思わず近づいて、「ねえ、どうしたの? 少し手伝ってあげるよ。」と声をかけた。

そして、優は彼にさまざまな数学のテクニックを教え始めた。健太は興味津々で聞いていたが、彼の頭にはその情報が入っていかなかった。だが、優の熱心さに感化されたのか、健太は「これ、覚えておく!」と大声で宣言した。

このやりとりを通じて、優はふと、健太に対する見方が変わり始めた。
彼は、たくさんの欠点を抱えながらも、自分らしさを失わずに生きている。優はいつも完璧主義者だったが、彼の不器用さは逆に心地よいものでした。少しずつ、周りの目を気にしない自由な発想に惹かれていく優の心は、どこか計算できない。

その日はふさふさの雲が空を覆い、透き通るような青空が、時折顔を出していた。優は、こうした健太との瞬間を重ねていく中で、数学と同じように恋愛にも浮き沈みがあることを思い始める。

ある日、サークルの飲み会が開かれた。優は珍しく浴衣を着て参加。彼女の姿を見た健太は、一瞬目を奪われた。「うわっ、優、すごく綺麗だね!」と、思わず叫んでしまう。優はその言葉にドキッとしてしまい、彼女の心臓はドキドキしていた。

その夜、健太は酔っ払うほどにリラックスし、まじめに数学を教えてもらった話や、おかしな失敗談を語って聞かせた。優は彼の話を聞きながら、いつも冷静な頭で計算している自分が、なんと彼の笑いに溺れてしまっているのか理解できなかった。

「これまでの恋愛方程式、どこか間違っていたのかもしれない」と。優はふと思った。

その後も何度も健太との関係が進展していく中で、優は「数式で恋愛を解明できるはずだ!」という思いが捨てきれなかった。そして、何度も彼を分析してみようとしたが、健太の不器用さと愛情表現には、どんな公式も及ばないことに気づく。

計算できない感情、それは健太が優に教えてくれた一番のレッスンだった。

優は結局、自分の恋愛の理論を見直すことにした。「恋は単なる数式ではなく、心の中の感情や夢が絡み合ったもの。」「感情を感じられることが、幸せだ。」と。

遂に、達成感に満ちた優は、自分が好きな人の隣で、1つの数式が笑顔になっているのを感じる。

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