前編 後編
時は2023年。東京の中心にある国立科学博物館の壮大な建物は、その日も研究者たちの知識と好奇心で溢れていた。特に活気に満ちていたのは、新たな可能性を探るフロンティア、量子コンピューティング研究所だった。その中心にいるのは主人公、冴木秀夫、一人の若き天才エンジニアである。
冴木は自然と人々から一目置かれる存在だった。彼の探究心は底知れず、それは時として、人々に恐怖さえ感じさせた。量子コンピューティングの進歩により、私たちが理解してきた宇宙の認識は一変しようとしていた。彼はまるで巨大なパズルのピースを組み立てるかのように、量子力学と宇宙論の混ざった未知の領域に手を伸ばした。
実験が進む中、冴木のチームは、量子コンピュータが未知の「量子フレーム」を発見したことを示す結果を得た。それは別の宇宙、異次元への窓だった。チームは興奮と同時に戸惑い、緊張に包まれた。この発見は人類の科学史において最も重大なものの一つだったが、同時にその結果が何をもたらすのかは誰にも予測できなかった。
次のステップはこの新しい現象をどう利用するか、そしてその結果にどう対処するかを決めることだった。しかし、冴木はすでに自分の答えを見つけていた。彼は新たな技術を開発し、別の宇宙へと旅立つことを決意していた。この目的を達成するため、彼は日夜研究に勤しんだ。彼の周りの研究者たちも、彼の情熱に引きつけられ、新たな冒険への準備を進めた。
このときまだ、彼らが探求の果てに何を見つけ、どんな影響があるのかを誰も知らなかった。しかし、その後の出来事は人類の歴史を塗り替えるだけでなく、冴木秀夫自身の運命をも大きく変えることになるとは、まだ誰も予想していなかった。
ある晩、冴木は自分のコンピュータの前に座り、新たに開発したプログラムを動かした。そして彼は、まるで深淵を覗き込むようにその結果を眺めた。彼の手元にあるデータは、新たな宇宙、それは彼が「クオンタム・フレーム」と名付けたその場所への初めての足跡だった。
冴木の目の前に広がるのは、見たこともない、想像を絶する新たな宇宙だった。彼はその壮大さと、自分の探求心が開いた新たな扉に息を呑んだ。同時に、彼の心の中にはある恐怖が芽生え始めていた。それは、彼自身の手で開いた新たな世界が、思わぬ問題を引き起こす可能性があるという恐怖だった。
そして、その時、冴木秀夫は初めて自身の技術の影響をどう対処すべきか、真剣に考えるようになったのである。この時点で、彼はまだこの新たな旅路が、彼自身と世界全体にどれほどの影響を及ぼすかをまったく理解していなかった。しかし、その先に待つ試練と困難に直面する覚悟を、彼はすでに決めていた。