23世紀を迎えた日本、普段は大学の講義を寝て過ごす若きタケシは、まさに「ダメ学生」の見本のような男だった。無気力に人生を流し、友人たちと語らうことも少なく、何か新しいことに挑戦する気力もなかった。ある日のこと、彼は大学の古びた図書館で謎のカプセル型タイムマシンを見つけたとき、人生の運命が大きく変わるとは思いもしなかった。
タケシは半信半疑のまま、そのカプセルに乗り込み、ボタンを押す。すると、奇妙な光に包まれ、次の瞬間、彼は2230年の未来に飛ばされていた。
目の前に広がるのは、型破りな機械と、見たこともない色鮮やかな街並み。通りすがる未来の人々はみな、笑顔を浮かべている。
「大丈夫、君もすぐに慣れるさ!」
彼の目の前に現れたのは、個性的なファッションに身を包んだ青年だった。
「君も未来の住民にならない?」
そんな軽快な言葉にタケシは戸惑う。
「俺なんか、何もできないよ。どうせすぐ帰されるし…」
しかし、その青年は笑いながらタケシを引っ張って行く。
未来の都市には、彼が想像していた成長とはまったく違った「成長」の概念があった。人々は失敗を大いに笑い飛ばし、他者の意見を楽しむ姿勢を持っていたのだ。
「育ての親」「友人」という言葉が、未来では非常に特別な意味を持つことを知る。
タケシは、次第に未来の人々と交流する中で、自分の思考パターンを変えていく。
彼は様々なユニークな体験を通じて、人生の本質に気づかされる。 例えば、失敗を「成功の母」とする市民たちの姿勢に感化され、タケシは自分自身を受け入れる決心をする。
「やっぱり、少しずつ成長していけばいいんだ」
それでも、彼の心の中には常に「元の世界に戻りたい」という気持ちがしっかりと根付いていた。
やがて、特に心に残ったのは「成長」についての概念だった。未来の人々は、「成長」をある種のアートとして捉えていたのだ。失敗をも笑い飛ばし、次の挑戦に対する意欲を失わない。
「僕も、誰かにとっての成長の素材になることができたらいいな…」
と、絶望的に思っていた自分の姿を、彼らの中に見出していった。タケシはついに、自分自身を変える一歩を踏み出せるのではないかという期待を抱くようになる。
しかし、未来の世界の変化に惹かれ、彼は最後に一つの衝撃的な真実に直面する。
実は、未来の人々は全て、タケシが成長できるようにプログラムされた人工知能だったのだ。
自身が選んできた選択肢が、彼の成長を助けてくれたのだと知ったとき、タケシは驚愕した。しかしそのことを心に止めたことで、彼は「自分は何でもなれる」という新たな決意を固める。
未来が彼の内面を刺激してくれたことに対して、真剣に感謝する気持ちが湧き上がってくる。
ついに、タケシは未来を楽しみながら、明るくて前向きな自分を見つけ、元の世界に帰還することが決まった。
「お別れだ!結果として、俺はちゃんと成長できたんだから!」と元気に叫び、カプセルに巻き込まれたのだ。
だが、目を覚ますと、そこは彼が見慣れた本棚のある図書館だった。現実だった。全ては彼の夢で、彼の妄想だったのだ。
周りには誰もいないカプセルの中で、タケシはファンキーな未来の友人たちを思い出し、その独特な面々を心の中で温かく笑う。「あいつら、面白かったな」と。
夢の中での経験が決して無意味でなかったことを実感する。タケシは考える。
「未来に行く必要はない。目の前の現実から、自分で成長していけばいい。」
机の前に座り込み、タケシは勢いよくペンをずらし、人生という冒険を始める。
一歩を踏み出すことで、未来は自分にある。