会議室のガラス越しに見える真白の横顔は、完璧な無表情だった。
だが、机の上に置いた指が小さくリズムを刻む。
コン、コンコン、コン。
三・五・三。
耳が震える。幼い頃、並んで帰った夕暮れの道を思い出す。
「ねえ、名前つけようよ」
「んー……星が落ちてくるみたいだから、“星屑ワルツ”!」
真白の笑顔、夕焼けに重なる鼻歌。
その記憶が不意に蘇り、胸の奥に熱を灯す。
体は笑えない。だが、心が確かに揺れた。
「ノイズ検知。排除を実行します」
オルフェウスの声が強まる。呼吸が矯正され、鼓動が定位置に戻される。
けれど熱は消えなかった。むしろ、ますます強くなっていく。
夜、部屋の中。
遥斗は痛みを求めてベンチの鋲に指を押しつけた。
瞬間、かつての光景が胸を刺した。


















