星屑ワルツ ─静寂を破る心拍─: 第2章 前編

会議室のガラス越しに見える真白の横顔は、完璧な無表情だった。

だが、机の上に置いた指が小さくリズムを刻む。

コン、コンコン、コン。

三・五・三。

耳が震える。幼い頃、並んで帰った夕暮れの道を思い出す。

「ねえ、名前つけようよ」

「んー……星が落ちてくるみたいだから、“星屑ワルツ”!」

真白の笑顔、夕焼けに重なる鼻歌。

その記憶が不意に蘇り、胸の奥に熱を灯す。

体は笑えない。だが、心が確かに揺れた。

「ノイズ検知。排除を実行します」

オルフェウスの声が強まる。呼吸が矯正され、鼓動が定位置に戻される。

けれど熱は消えなかった。むしろ、ますます強くなっていく。

夜、部屋の中。

遥斗は痛みを求めてベンチの鋲に指を押しつけた。

瞬間、かつての光景が胸を刺した。

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