剣持亮は、東京の喧騒から逃れ、静寂と美しい風景が広がる小さな村に足を踏み入れた。村は、以前からの伝説に包まれた場所だった。しかし、そこには薄暗い霧が立ち込め、どことなく不気味な雰囲気が漂っていた。彼は、最近何人かの住人が失踪したというニュースを耳にし、直感的にこの事件に関わるべきだと感じていた。
村は人々が温かく迎えてくれた反面、どこか影をひそめているようでもあった。住人たちは、特定の場所に近づかないように警告してくるが、その理由を明かさない。
「ついてきてはダメだ。あそこの山の向こうには行くな。」年配の男性が言った。
亮はその言葉に心を引かれたが、同時に興味を持ってしまった。
彼は、伝説にある「忘れられた灯」のことを調べ始めた。古い神社が村の外れにあると聞き、興味を抱いてその場所へ向かった。神社に着くと、薄暗い森に囲まれた静かな空間が広がっていた。祭壇は藪に囲まれ、道の真ん中にはひっそりとした石畳が続いていた。
神社の扉を開けると、古びた神像が祭られた空間が現れた。人はほとんど訪れないように感じるこの空間には、忘れられた雰囲気が漂っていた。ただ一人、白髪の老女が座っていた。
「失踪者の話を聞いたのかい?」彼女の声は静かでありながら、どこか魔力を帯びていた。
亮は頷きつつも、内心では半信半疑だった。
「失踪した人々は、灯を求めて異世界に迷い込んだと言われている。あんたも同じ運命になるかもしれないよ。」
老女の言葉に、亮は戸惑いを覚えた。異世界?どんな非現実的な話なのか。しかし、説明するうちに、彼女の言葉には何か真正の重みが感じられた。
「その灯は、希望だ。希望を求める者は、決して戻れない場所へ行くの。」
亮はその言葉を胸に、大いなる謎を解こうと捜査を続けた。村の人々の行動に脅迫めいたものを感じながらも、彼はますますこの村の秘密に引き寄せられていった。
ある晩、亮は急に目が覚めた。窓の外には、異様に美しい光が輝いていた。彼は好奇心を抑えきれず、その光を追うように外に出た。霧の中を進むと、見知らぬ道が開けた。そこには、まばゆい光を放つ灯が立っていた。
「海の向こう、君を待っている」どこからともなく声が聞こえ、彼の心は踊った。しかし、同時に恐怖もアタマをよぎった。
翌朝、村の住人たちは亮を心配して探し回った。彼は失踪者の一人となり、それから数日間、意識を失ってしまった。意識が戻ったとき、周りは見知らぬ風景だった。
村は変わり果て、俺も変わってしまったのか。
やがて、彼は自分が忘れられた灯、希望を求める存在だということを理解した。数々の幻影が彼を惑わせたとき、老女の言葉が頭の中に響いた。「戻れなくなる場所へ行くことも、この村の人々がどれだけ彼を助けようとしているかを知らずにいることも、彼自身が選んだことだ。」
戻る道を探すために、踏み出すことが必要だった。再び逢うためには、自身の力が必要だと悟った。
最初の一歩を踏み出すと、村の人々の顔が目の前にこちらを向いていた。彼らは亮を理解し、彼がどれだけの苦労を経たかを見守っていた。しかし、鮮やかな記憶や感じた痛みの奥には、希望の光がが静かに煌めいていた。
「もうダメだと思っていた時に、君たちが助けてくれた。忘れられた灯は、結局自分の中に存在したのかもしれない。」
亮はそう呟き、彼は再びこの村で生きる道を選んだ。人々はその言葉を笑顔で迎え、村に再び光が差し込む瞬間が訪れた。
そして、失った記憶は彼の中で再生され、彼自身の人生を歩む力となった。それは、ただの灯でなく、絆の灯だった。