灯台の日記 – 前編

灯台守の名はタカシ。彼は若いころからこの村の灯台で働いていた。村の中でも特に美しいと評判のミヤとの出会いは、ある晴れた日のことだった。彼女は海岸で貝殻を拾っていて、その姿が太陽の光で輝いて見えた。タカシは一目で彼女に心を奪われた。それからというもの、二人はよく海辺で時を過ごすようになった。ミヤの笑顔や優しさ、そして彼女の声はタカシにとっての宝物となった。

しかし、その幸せな時間は長くは続かなかった。ある日、村に都会からの訪問者がやってきた。その男性はミヤに一目惚れし、短期間で彼女を口説き落とした。ミヤはその男性と結婚することを決意し、タカシはその事実を知った時、彼の世界は崩れ去った。しかし、彼はミヤを責めることはできなかった。彼女の幸せを願う気持ちと、彼女を失いたくないという自分の気持ちの間で揺れ動く日々が続いた。

灯台守としての仕事は変わらず続いていた。しかし、彼の目に映る海の色は以前とは異なっていた。彼はミヤを遠くから見守り続けた。彼女の家族との日常、彼女が夫との間に子供を持ったこと。子供たちの成長や、夫が突然の事故で亡くなった後のミヤの生活。彼女の人生の節々が、タカシの日記には綴られていた。

ミヤが夫との間に子供を持ったことを知った時、タカシの心は複雑な気持ちでいっぱいだった。彼女の幸せそうな姿に安堵する一方、彼自身がミヤと共に過ごすことのできなかった時間に寂しさを感じていた。また、ミヤの夫が亡くなった後、彼女が一人で子供たちを育て上げる姿には敬意と同情の気持ちが交錯していた。

そして、ある冬の日。タカシは村の人々から、ミヤが病で亡くなったことを知らされた。彼の心は言葉にできないほどの悲しみで満たされた。日記の最後のページには、彼の涙の跡とともに「ミヤ、私たちの思い出は永遠に心の中に残る。ありがとう」という言葉が綴られていた。その後のページは真っ白で、タカシの物語はそこで終わっていた。

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