灯台の日記 – 前編

ジュンは驚いた。この灯台で、こんな古い日記を見つけるなんて想像もしていなかった。彼の目は、ページに記された言葉「この日記を見つけた者へ。私の物語を読んでください」という言葉に引き寄せられた。その筆跡は、時間に風化されて少し薄れていたが、それでも感じられる熱意や情熱がジュンの心を鷲掴みにした。

彼はゆっくりと次のページを開いた。そこには、50年前の日付と、灯台守の名前が記されていた。名前は「タカシ」と読めた。タカシという名の灯台守が、この灯台で何を感じ、何を考えて生きていたのだろうか。ジュンは、その答えを知るために、ページを一つ一つめくっていった。

日記の初めの方は、灯台守としての日常の出来事や、村の人々との交流が綴られていた。タカシは、灯台のメンテナンスや灯の点検、そして夜には船を安全に導くための信号の操作を行っていた。また、彼は村の子供たちと遊んだり、村の人々との交流を楽しんでいたことがわかった。

だが、日記が進むにつれ、タカシの恋愛に関するエピソードが増えてきた。彼は村で最も美しいとされる女性、ミヤに恋をしていた。日記には、彼がミヤに会うたびに感じるドキドキした気持ちや、二人で過ごした時間の幸せな記憶が詳しく綴られていた。

しかし、その幸せは長く続かなかった。ミヤは他の男性と結婚することになり、タカシはその事実を知ったときのショックや悲しみを日記に吐露していた。彼はミヤを思う気持ちを断ち切ることができず、灯台での仕事を通じて彼女を遠くから見守り続けていた。彼は日記に、ミヤの家族との日常や、彼女の笑顔、そして時折見せる寂しげな表情について綴っていた。

ジュンは、タカシの心の葛藤や愛情を感じながら、その日記を読み進めていった。彼は自らの恋愛の悩みや親友との口論を一旦忘れ、50年前の灯台守の恋愛物語に深く没頭していた。彼はタカシの日記を通して、真の愛や人生の意味について考え始めた。

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