「くそ、逃げなきゃ…!」慶太郎は必死に自分を奮い立たせようとするが、怪獣の姿がどんどん迫ってくるのを見て、足がすくんで動けなくなってしまった。その瞬間、彼の胸の奥から不思議な感覚が広がり始めた。まるで誰かの声が、彼の内側から響いてくるかのように感じられた。
「慶太郎、体を借りるぞ。」
それは確かにアウルムの声だった。彼は驚いて周囲を見渡したが、もちろん彼女の姿はどこにも見当たらない。しかし、その声は彼の心の中に直接響いてくるようだった。恐怖と混乱の中で、慶太郎は何も答えることができなかった。ただ、心の中で「助けてくれ…」と強く念じた。
すると、突然彼の視界が暗くなり、意識がぼやけていく。彼の体が誰かに引っ張られるような感覚がして、気がつけば、自分の体が勝手に動き始めていた。まるで、自分が自分の体の中に閉じ込められ、別の何者かに操られているかのような感覚だった。
「ふむ、慶太郎。妾が少し力を見せてやる。」
アウルムの声が再び彼の中で響いた。慶太郎の体が急に軽くなり、視界がクリアになる。彼の手が自然と前に伸び、その手から金色の光がほとばしった。まるで金属のような硬い光が、まっすぐ怪獣に向かって放たれた。慶太郎の体が自らの意志ではなく、アウルムの意志で動いていることに気づくが、驚く間もなく次の瞬間には、光が怪獣の翼を貫いていた。



















