大空の船 – 第2章 前編

数年前、初めてこの工房を訪れたときから、アレンの目標は変わっていない。いつか本物の「空飛ぶ船」を作り、自ら操縦して大空を翔けること。その夢のためにゴードンの下で学んできたが、ある時アレンは師匠が「ある一定のレベル」以上の研究には踏み込もうとしないことに気づいた。以前、ゴードン自身が大掛かりな飛行装置の開発をしていたらしい形跡はあるのに、その資料は厳重にしまいこまれ、話題にしようとすればすぐに口をつぐむ。

アレンが抱く「空飛ぶ船」の構想は、ゴードンの小型機や試作エンジンを改良するだけでは到底実現できないだろう。そのためにはもっと大掛かりな設計と資金が必要だ。だが、ゴードンは今の安定した修理やちょっとした発明で食いつないでいるだけで、大規模な挑戦には腰を上げそうにない。アレンにはそれが歯がゆかった。

そんなある日、アレンが工房で整理をしていると、隅の棚から古ぼけた設計図の切れ端が見つかった。翼を広げたような船体のシルエットと、浮力を保つための大型の装置が描かれている。「これぞ自分が求めていたものだ」と胸が高鳴るが、同時に「この図面は見るな」とゴードンから厳しく叱責される。

「まだ早い。お前には扱えん技術だ。下手をすれば町ごと吹っ飛ぶぞ」

ゴードンは本気で怒っているようだった。アレンは口を閉ざし、申し訳なく俯きながらも、その図面に描かれた構想が頭から離れない。もしかすると、ゴードンは過去にこの巨大な飛行船を作ろうとして失敗したか、何らかのトラブルを抱えたのではないか。いずれにしても、このままでは「空飛ぶ船」を作る夢が遠のいてしまう。もはや、ここで修理や小型装置の開発をしながら小遣い稼ぎをするだけでは物足りない。そう強く感じるのだった。

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