大空の船 – 第2章 前編

ある夕方、アレンは工房での作業を終えた後、意を決してゴードンに切り出す。

「師匠、僕はもっと大きな飛行装置を作りたいんです。小型の試作機をやってみてわかったけど、この町の人たちからもちょっとした投資を募れば、素材の確保だってできるはずです」

するとゴードンは腕を組み、顔をしかめるようにして首を振る。

「大げさなことを言うな。金も労力も膨大だぞ。それに成功する保証はない」

「わかってます。でも、これまでずっとこの夢だけを追いかけてきました。師匠の下で学んだおかげで、僕だってある程度の技術や知識は身につけました。だからこそ……やってみたいんです」

「馬鹿を言うな。俺だって好きでこんな半端な研究をやってるわけじゃない。世間の目は厳しいし、資金は足りない。大体、お前みたいな若造が大言壮語しても誰が信用する? 大怪我して終わりだ」

ガツンと突き放すような言葉に、アレンは胸が痛んだ。尊敬する師匠だからこそ、理解してもらいたかったし、一緒に新しい挑戦をしてくれると密かに期待していた。だが、その望みはどうやら甘かったらしい。アレンは悔しさを滲ませながらも、眼だけはしっかりとゴードンを捉えている。

「……わかりました。ならば、僕は自分でやります。お金も人も、僕自身が探して、僕自身の工房を立ち上げます」

「勝手にしろ。そんな簡単な話じゃないぞ」

「それでも、やりたいんです。師匠のおかげで色んなことを学びました。感謝してます。でも、ここにいては何も変わらない。そう思うんです」

その瞬間、部屋の空気が張り詰めた。ゴードンはずっとアレンの背中を見送るように黙っていたが、最後に小さく「せいぜい気をつけろよ」とだけ呟いたように聞こえた。アレンはそれを聞いて微かに会釈し、工房を後にする。心の奥がざわつくような、寂しさと決意が入り混じったまま、彼は夜の町を歩いて帰っていった。

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