大空の船 – 第2章 前編

翌日、アレンは両親に相談し、町外れにある古い倉庫を借り受けることを決めた。屋根は崩れかけ、壁には大きな穴が空いているような粗末な建物だったが、最初の作業拠点としては十分だ。町の人々にしてみれば、あのゴードンの下で働いていたアレンが「独立」するとは驚きだが、妙な期待感もあった。貴重な修理工として役立っていたのは周知の事実であり、彼が新しい何かを作るかもしれないと興味を示す者もいる。

「お前が工房を始めるなら、この古びた鉄パイプでも使うか?」

「余った木材があるから、床の修理に使ってくれ」

こんなふうに、あちこちから半ば廃棄される予定だった素材がアレンの倉庫に運び込まれてくる。彼はそのすべてを一つずつ丁寧に検分し、「これで船体を組めるかも」「こっちはエンジンの骨組みに使えるかな」と想像を膨らませる。もしかすると、大勢の人間に“無謀”と笑われるかもしれない。けれど、ここで留まっていては一生夢に手が届かないだろう。そう覚悟して、新しい一歩を踏み出したのだ。

倉庫を改造しながら、「アルバトロス」という名を心の中で思い描く。これはアレンが幼い頃から空想してきた「空を飛ぶ船」にふさわしい名前だと勝手に決めている。大きく広がる帆や翼を備え、空のどこへでも自由に行ける船。ゴードンは理解を示してくれなかったかもしれないが、自分にはもう後戻りできない。それに、師匠の教えや技術はしっかりと身体に染みついている。アレンはそう自分に言い聞かせる。

時折、工房を出るときにゴードンの姿を遠くから見かけることがある。声をかけようとすると、ゴードンはちらりとこちらを見て、何も言わずに作業台へと戻っていく。相変わらず不器用な師匠だが、それがゴードンの精一杯の見送り方なのだろう。アレンはその姿を目に焼き付けながら、自分が今やるべきことに集中する。大空への道はまだ遠い。だが、すべてはここから始まるのだ。

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