ゾンビ社長のリモートワーク – 第5話

プレゼン当日、タカシは万全の準備を整えた。まず、ゾンビ化した外見を隠すために特製のサングラスを用意し、さらに顔色をカバーするために厚化粧を施した。手袋をつけることで腐敗し始めた手を隠し、社員たちにも「プレゼン用のスタイルだ」と説明していたが、内心では不安でいっぱいだった。「これでバレないだろうか?」と、タカシはプレッシャーを感じながらも、何とか冷静を装った。

会場に到着し、クライアントたちの前に立ったタカシの姿は、確かに異様だった。サングラスに厚化粧、そして手袋姿のタカシを見て、井上商事の担当者たちは一瞬驚いたが、誰も特にそれを指摘することはなく、むしろ「最近のトレンドなのか」と勘違いしている様子だった。しかし、副社長の小田は違った。彼はその異様な装いを不自然に感じ、プレゼン中もタカシの行動を注意深く観察していた。

プレゼンが始まり、タカシは自信を持って進めていく。話の流れも順調で、クライアントたちも興味を持っているようだった。しかし、タカシの体には徐々に異変が現れ始めていた。ゾンビとしての衝動が強まり、体が重く、異常な食欲が湧き上がってきた。「今ここで…抑えなければ…」タカシは内心で必死に自分を抑え込みながら、プレゼンを続けた。

しかし、体の一部が反応し始めた。特に、手袋をつけた手が熱くなり、指がうずき始めた。タカシは焦りながらも何とか冷静を保ち、プレゼンの流れを止めないよう努力した。しかし、ついにその瞬間が訪れた。タカシが大きくジェスチャーをした時、手袋が音を立てて裂けてしまったのだ。ゾンビ化した灰色の手が露出し、クライアントたちは一瞬息を呑んだ。

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