名無しのドラゴンスレイヤー – 前編

前編 後編

それは全てが静かな一日から始まった。

平和な農村、アヴァロン。広大な野原を囲むように小さな村々が点在し、朝日が村を訪れると生活の音色が始まる。畑で働く農夫たちの笑い声、馬車が石畳を行き交う音、小川のせせらぎ。そんな音が絶え間なく織りなす穏やかな日常。そこでは、名もなき農夫、主人公のエヴァンが暮らしていた。

エヴァンは村の若者たちの中でも特に努力家で、一日の仕事が終わると腕力を鍛えるために剣術を練習していた。しかし、彼の剣術は単なる身体力向上の手段であり、彼が戦士となる運命など想像もしていなかった。

ある朝、エヴァンがいつものように畑で働いていると、突然、地鳴りのような音が鳴り響いた。彼が空を見上げると、あまりの光景に息を飲んだ。空から巨大なドラゴンが降りてきて、村を焼き払っていたのだ。彼の心は恐怖で凍りつく。しかし、無防備な村人たちを見て、彼は自身が行動を起こさねばならないと悟った。



彼は自宅に戻り、剣を手に取る。ただの農夫である彼がドラゴンと戦うなど、馬鹿げた考えであることは彼自身が一番よくわかっていた。しかし、村を救うため、家族を守るため、彼は立ち上がった。

一方、その情報がすぐさま王宮にも届いていた。ドラゴンの存在は伝説の中だけのもので、人々が直面するような存在ではなかった。しかしその伝説が現実のものとなり、国王は即座に最高の騎士団をアヴァロンへと向かわせることを決定する。しかし、王宮から村までの距離を考えると、間に合うかどうか疑問だった。

そんな中、エヴァンは握りしめた剣を手に、火の海と化した村を駆け抜ける。彼の胸は恐怖で高鳴り、冷たい汗が全身を覆っていた。しかし、彼の足は一歩もためらうことなく、巨大なドラゴンに向かって走り続けた。

初めて見るその巨大な存在は、伝説以上の恐怖を彼に押し付けた。しかしエヴァンは前に進み、叫び声を上げながら剣を振り上げた。剣はドラゴンの厚い鱗に当たり、火花を散らす。

これが、エヴァンの物語の始まりである。