遺忘の森の守護者 – 第1章

序章

都会の騒音や喧騒から遠く離れた、小さな村にリナは生まれ育った。この村は古くから数多くの伝説や昔話が語り継がれている場所だった。村人たちの間では、夜の団欒の時には昔話が必ずと言っていいほど取り上げられる。そんな環境の中、リナは昔話や伝説を聞くことが何よりもの楽しみだった。

彼女の一番のお気に入りは、遠い祖先が森で遭遇した不思議な出来事や、神秘的な場所に纏わる話だった。そして、その中でも「遺忘の森」という伝説は、リナの心を特に捉えて離さなかった。

「遺忘の森」とは、村の北にあると言われる広大な森のこと。誰もが一度は耳にしたことがある名前だが、実際にその森を訪れた者はいないという。森の中には、時間が止まったかのような場所が広がっており、訪れる者の思い出を吸い取り、その人を永遠に森の中に閉じ込めてしまうと言われている。



村のお年寄りたちは、若い頃にその森を訪れようとした友人が消えてしまったという悲しい話をして、子供たちには決して近づかないようにと忠告していた。しかし、リナはその警告を真に受けることができず、むしろ遺忘の森に対する興味を一層強めていった。

彼女の家は、図書館のように古書や古文書がたくさん収められている家だった。リナの両親は、代々この村の歴史を綴る者として、多くの文献を収集していた。リナは、休日のたびにその古書を片っ端から読み漁り、遺忘の森に関する情報を探していた。

ある日、彼女は家の地下室で、長い間封印されていた古い手記を見つける。その手記には、遺忘の森を訪れた先祖の冒険が詳細に綴られていた。リナはその手記を読み進めるうちに、自分もその森を訪れてみたいという気持ちが募っていった。

夜空に星が輝く中、リナは窓辺に座り、遺忘の森の伝説を思い浮かべながら、その謎に挑戦することを決意するのだった。