祖父の遺品整理は、悲しみと同時に過去の思い出が蘇る時間だった。アレックスは祖父の部屋で大量の書類や古びた家具、思い出の品々を手に取りながら、涙をこらえていた。祖父との思い出が次々と彼の心に浮かんできた。釣りに行った日、祖父が作ってくれた手作りの玩具、そして長い冬の夜に語られた昔話。そうした中で、アレックスの目に留まったのは、一つの砂時計だった。
この砂時計は、他のどんな砂時計とも違っていた。一般的な砂時計のように、透明なガラスの中に砂が入っており、時間が経つと砂が下に落ちていく。しかし、この砂時計の砂は金色に輝いており、砂の流れる動きも他のものとは異なっていた。何となく特別なものであることを感じたアレックスは、砂時計を手に取って逆さにした。
すると、驚くべきことが起こった。部屋の中の時間が逆行し、数秒前の状態に戻ったのだ。驚きのあまり、アレックスは砂時計を元に戻してみると、時間は再び正常に戻った。彼は息をのんで、砂時計をじっと眺めた。祖父の遺産の中に、こんな不思議なアイテムがあったとは夢にも思っていなかった。
興奮したアレックスは、さっそく砂時計の力を試すことにした。まずは、数時間前に割ってしまったグラスを元に戻してみることにした。彼は砂時計を逆さにし、時間を逆行させた。すると、割れていたグラスが元の形に戻り、テーブルの上にきれいに並んでいた。アレックスは感動し、さらに過去のさまざまな出来事を修正してみることに決めた。
彼の頭に浮かんだのは、小学生の頃に友人との間に起きた大喧嘩だった。その喧嘩が原因で、友人との関係がギクシャクし、最終的には疎遠になってしまった。アレックスは、その出来事を修正するために、砂時計の力を使って過去に戻ることにした。
彼が砂時計を逆さにしたとたん、彼の周りの景色が変わり、彼は小学生の頃の教室に立っていた。アレックスは驚きのあまり、しばらく動けないでいたが、すぐに状況を把握し、友人との喧嘩を回避するための行動を取ることにした。彼は友人との関係を修復し、過去の出来事を変えることに成功した。
アレックスは砂時計の力を使って、さまざまな過去の出来事を修正していった。失恋した日、失敗した試験、悔いの残る選択。彼はその都度、砂時計を逆さにし、過去を変えていった。しかし、次第に彼は大きな出来事を変えるようになっていった。彼は過去の大きな事故や、大切な人との別れなど、さまざまな出来事を変えることに挑戦し始めた。
しかし、彼が過去を変えるたびに、現在の現実も少しずつ変わっていった。最初は気づかなかったが、ある日、彼の家族の顔が変わっていたり、自分の住んでいる場所が変わっていることに気づき、驚いた。彼は砂時計の力を使いすぎたことで、現実の歴史を変えてしまったのだと気づいた。
アレックスは、砂時計の力を使うことのリスクを理解し、慎重に行動するようになった。しかし、彼の心には、過去の失敗や悔いの残る出来事を修正するための欲望が常にあった。彼はその欲望との闘いながら、砂時計の力を使い続けることになる。
この砂時計との出会いが、アレックスの人生を大きく変えることになるとは、彼自身もまだ知らなかった。