歌う井戸 – 最終話

絆の記憶

純と陸の再会は、櫻村の人々にとっても大きな話題となった。特に若い世代の中で、井戸の事件の噂は再び持ち上がるようになっていた。二人の勇気ある行動は、次の世代への伝説として、口コミで語り継がれていたのだ。

純のコンサートが櫻村の広場で開かれることとなり、村の人々はそれを楽しみに待っていた。そして、その日がついにやってきた。

夜の広場は、幾千の灯りで照らし出され、幻想的な雰囲気が広がっていた。純の歌声は、クリスタルのように透明で、人々の心を打つものだった。特に彼女が「井戸の歌」と名付けた曲を披露した時、場所を問わず涙を流す者が後を絶たなかった。

コンサートの後、純と陸は井戸の近くの木の下で、ふたりだけの時間を持った。

「この木の下で、私たちはたくさんの思い出を作ったね。」純は、昔を懐かしそうに思い出していた。

「あの時のことを考えると、まるで別の人生のようだよ。」陸は、遠い目をして答えた。「でも、その経験が私たちの絆を深めたんだ。」

純は陸の手を取り、「ありがとう」と囁く。二人は、それぞれの道を選んだが、心の中では常に互いを思いやっていた。その絆は、どんな困難も乗り越える力となっていた。

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