ある晴れた日、気楽な性格の中年男、タケシは、探検心をくすぐる場所を求め、忘れ去られた山村「ユウコ村」を訪れることに決めた。陽射しが燦々と降り注ぎ、心地よい風が彼の髪をなびかせる。村への道は長く、静けさに包まれていたが、タケシにとってはそのすべてが新鮮だった。
村に着くと、そこには古びた家々と、風に揺れるしなびた看板が立ち並んでいた。”ようこそ、ユウコ村!” と書かれた看板も、どこか無感情に見える。
タケシは村の唯一の酒場「まんたん」に足を運び、早速宴会を開くことを決める。村の住人たちは、最初は驚いていたが、彼の軽妙なトークと笑い話にすぐに心を開いた。
「こんな村で酒を飲んでて、みんな失踪するって本当?」とタケシが冗談交じりに尋ねると、村人たちは一瞬ギョッとした表情を浮かべた。
「いや、あれは昔の話さ。今は大丈夫だよ。」歳を重ねた酔っ払いの男が語りかける。
次第に酒は進み、タケシは自分のジョークで場を盛り上げていく。彼の明るい性格は、村人たちをほっとさせ、緊張感をほぐすのに役立っているように見えた。
しかし、夜が深まるにつれて、雲行きが怪しくなっていく。村人たちの間で語られる古い伝説が、次第に現実味を帯びてくる。
「霊的存在に供物を捧げなければならない。」
村人たちのそのセリフは、タケシの耳に冗談として響くだけだった。
「霊的存在?それはお化けのお友達ってことか?」
と盛り上がったタケシは、村人たちの困惑した顔を眺めて、それがまた面白いと感じていた。それにしても、笑いの渦が続く限り、何も問題はないと確信していた。
だが、ピンと張りつめた空気が一瞬揺らぎ、酒場のドアが不気味な音を立てて開く。タケシは笑い声を上げてその方向を振り返った。
「いったい、誰かいるのかい?」と、彼はまた冗談を言う。
その瞬間、短い悲鳴が聞こえたような気がした。村人の一人が、驚きのあまり、無言で空気を失ったかのように立ち尽くしていた。
「おい、みんなも笑おうよ!ただの酔っぱらいの冗談だから!」とタケシは声をあげたが、村人たちの反応は台無しで、彼の笑い声だけが虚しく響いていた。
一人、また一人と村人が姿を消していく。その間、タケシは一向に楽しむことをやめられず、気楽さを崩さないでいた。
新たに紡がれる奇怪な出来事を、彼はただの悪ふざけとして受け流していた。しかし、周囲の状況はかつてないほどに不穏に変わり始めている。
「安心しろ、まだ俺の酒は残ってる!」とタケシは叫ぶが、内心では収拾のつかない悪夢の序章を感じ始めていた。
さらに、村が冥界のような静けさに包まれると、突如として現れた一瞬の静寂が訪れ、彼の心臓が大きく脈を打った。
宴会を続けながら笑い声をあげていた彼は、周囲で起こっている異様な現象に気づく。村人たちの姿はすでにほとんどいない。
最後に残った村人が、血の気の引いた顔でタケシを見つめる。
「あんた、運命が逆さまになっているんだ…」と彼はか細い声でつぶやく。
タケシは、それでも楽観的であろうとするが、身の周りで起こる恐怖にどんどん萎縮していく。
どんなに冗談を続けても、現実に酔い潰されることはできない。おどけた行動が、むしろ彼の運命をさらに危ういものにさせている。
失踪する村人たちの笑いが、彼の背後で渦巻き、まるで世界が揺さぶられているかのようである。
「これで幻想の終焉だ!」とタケシは叫ぶが、すでに彼の声は、空虚に消えていく。
もはや彼は、逃げ場を失った愉快な悪夢に囚われていた。
村の悲劇的な消失は、彼の軽薄な態度によって一層無惨なものとして終焉を迎える。
最後の瞬間、タケシはただ笑い声を上げ続け、その苦い命の結末を迎えるのだった。
笑いと共に、彼の不幸が語り継がれていく。
だから、ユウコ村は幽霊が住まう、愉快な悪夢を孕む場所として忘れられることはなかった。