深海の叫び – 第5章:真実への海底降下 前編

斎藤は、議論をまとめるかのように重い口調で、「我々は、これらのデータと映像を基に、次なる段階へと進む準備を整える。各部署は、今後も随時更新されるデータを精査し、この未知なる現象の全容に迫るため、最大限の注意を払って作業を進めるのだ」と宣言した。その声に、探査隊全体の決意と、一歩先に進むための確固たる意思が込められていた。

船内は、深海からの謎めいた映像と、連鎖するデータの解析に追われながら、しばしの静寂の中にあって、各自が自らの役割に徹し、未知の真実へ向かうための準備が進められていった。技術担当者たちは、映像と各種センサーデータの融合解析を試み、細かな変動や時系列データをもとに、古代の儀式に関連するパターンを見出そうとしていた。中村は、各隊員に対し定期的な健康チェックと、精神状態の記録を徹底するよう再度強く促し、その結果をもとに、必要な対策があればすぐに実行できる体制を整えた。

また、ローレンスは、自らの専門分野に従い、古代文献との照合作業にも取り掛かり、この紋章や象形文字が、実際にどの神話や儀式に関連しているのか、詳細な解析結果をまとめ始めた。彼の情熱的な議論に、斎藤は静かに頷きながらも、「どんな仮説であっても、真実は数字とデータで裏付けられなければならない。私たちは、感情に流されず、常に客観的な視点を持ち続けることが重要だ」と、厳かに語りかけた。

その後、艦載ドローンは更に深海底部へと降下し、広大な空間と、そこに広がる膨大な石造りの構造物、さらには幾何学的なパターンが刻まれた壁が映し出される。映像が鮮明になるにつれて、隊員たちはその壮大な光景に息をのんだ。「これは、ただの遺跡ではなく、かつてこの海底で、神々に捧げられた儀式の中心地だったに違いありません」と、ローレンスは目を輝かせながら語った。

斎藤は、映像の一部を切り出し、詳細な解析に回すよう指示を出し、「この部分の象形文字は、古代文献に記される『海の主』への祈りと一致する可能性がある。もしそうだとすれば、ここに封印されていた力は、何世紀にもわたり抑え込まれてきた、非常に強大なものであると言える」と、期待とともに警戒心を隠さず述べた。

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