美沙は退院後、健太と優子と一緒に暮らし始めた。彼らは美沙に日常生活をサポートし、以前の美沙が好きだったことややっていたことを教えてくれた。
「美沙、これ覚えてる?あなたが作った絵だよ。」
健太は壁に飾られた絵画を指さした。美沙はその絵画を見ても何も感じなかった。
「私が作ったの?」
「うん、あなたは絵が得意で、趣味で描いていたんだよ。」
健太はそう言って、絵筆とパレットを渡してきた。
「また描いてみる?」
「え…」
「大丈夫だよ。記憶が戻るかもしれないし、楽しいかもしれないよ。」
健太はそう言って、美沙を励ました。美沙は仕方なく絵筆を持ったが、何を描けばいいのかわからなかった。
「美沙、これ覚えてる?あなたが好きだった本だよ。」
優子は本棚から本を取り出してきた。美沙はその本を見ても何も感じなかった。
「私が好きだったの?」
「うん、あなたは本が大好きで、いろんなジャンルを読んでいたんだよ。」
優子はそう言って、本を開いてみせた。
「読んでみる?」
「え…」
「大丈夫だよ。記憶が戻るかもしれないし、面白いかもしれないよ。」
優子はそう言って、美沙を励ました。美沙は仕方なく本を受け取ったが、文字が頭に入ってこなかった。
美沙は少しずつ自分の人生に馴染んでいくが、同時に不安や疑問も抱くようになった。なぜ自分は事故に遭ったのか?なぜ自分の親や友人は連絡してこないのか?なぜ自分は健太や優子に対して愛情を感じられないのか?
美沙は自分の心に穴を感じた。自分が本当に幸せであることを確信できなかった。



















