和菓子の灯がともるとき – 12月30日 前編

12月26日 前編後編 12月27日 前編後編 12月28日 前編後編
12月29日 前編後編

朝のまだ冷たい空気が病院の廊下に漂うなか、由香と母は父の洋一がいる病室へと急ぎ足で向かった。今日は定期検査の結果が出る日だ。ここ数日、由香は家の掃除や店の片づけをしながらも、父の容体が気にかかって仕方がなかった。母も同じ思いだろう。エレベーターから降りて、薄暗い通路を曲がると、父の病室のドアが見える。

「お父さん、調子はどう?」

顔をのぞかせると、ベッドに腰掛けた洋一が「おお、由香か。母さんも来てくれたのか」と笑顔を見せる。それだけでも由香はほっとした。ついこの間まで、寝たきりの姿ばかり見ていたから、こうして座って待っていてくれるのがありがたい。

「今日は先生から検査結果が聞けるって言ってたよね。どう?」と母・祥子が尋ねると、父は「まあ、悪くはないってさ。ちょっと待てば先生が詳しく説明してくれるって言ってた」と答える。話をしているとほどなくして担当の主治医が病室を訪れ、簡単な挨拶のあと、資料を見ながらこう告げた。

タイトルとURLをコピーしました